今週号全記事見出し

「入れたら終わり」からその先へ フランスベッド メディカル杉並営業所

  • 2026/08/25

対話を増やし多職種連携へ

福祉用具は導入すること自体が目的ではない。利用者の生活がどう変わったのかを継続的に確認し、必要に応じて見直すことで、その効果をより引き出すことができる。そのためには、福祉用具専門相談員もチームケアの一員として積極的に情報を発信し、多職種と意見を交わすことが重要だ。フランスベッドメディカル杉並営業所の専門相談員・青島玲央さんと柴崎ほのかさんは、福祉用具の効果を「見える化」し、連携につなげようと模索している。

青島さんと柴崎さんは今年の初め、福祉用具の導入前後における変化を可視化する独自の「評価シート」を作成した。取り組みは6月に開催された「福祉用具専門相談員研究大会」でも報告されている。

シートでは、利用者の身体状況や生活環境などの基本的な情報や、「不安なし」を0、「非常に強い不安」を10とした主観的評価、介助時間や介助回数・転倒リスクなども細かく確認。導入前後における数値の変化を比較するとともに、多職種からの意見や評価も記入し、PDCAサイクルに沿って福祉用具の利用効果を検証できるようにした。

作成の背景にあったのが、福祉用具の効果を専門相談員だけで把握するのではなく、ケアマネジャーなど多職種と共有したいという思いだ。

「福祉用具に特化したシートがあれば、自分たちもその効果を可視化できますし、ケアマネさんなど、多職種の意見を反映することで情報も共有しやすくなると考えました」(青島さん)

シートを実際に活用する場面では、福祉用具の導入時に利用者の状態を確認し、その後のモニタリングで具体的な変化を記入。ケアマネらの意見も踏まえ、継続利用や福祉用具の変更などを検討している。例えば、室内移動に課題のある利用者には、手すりや歩行器を提案。デモ機での実際の利用状況などを踏まえ、主観的評価や転倒リスクなどを加味した結果、手すりよりも安全に移動できていると評価された歩行器を選定した。

青島さんが取り組みを進める背景には、専門相談員として多職種連携に難しさを感じてきた経験もあるという。

「正直なところ、これまで福祉用具専門相談員の意見や視点が多職種チームの中で十分に生かされていなかったと感じています。担当者会議の場でも福祉用具は導入後の役割が見えにくく、継続的な関わりについて十分に共有されていないと感じることがありました」(青島さん)

福祉用具は、利用者の身体に直接触れてケアを提供するようなサービスではないが、ベッドや車いすなどがなければ在宅生活そのものが難しくなる利用者は少なくない。だからこそ、製品を届けるだけで役割を終えるのではなく、専門相談員もチームの中で意見を出していく必要があると考えた。

「誰か1人ではなく、みんなで意見を出し合わなければ、より良い生活にはつながらないと思います。職種にかかわらず、同じ立ち位置、同じ歩幅で利用者さんを支えていきたいと思います」(柴崎さん)

また、ケアマネと密に連携するためには、介護保険制度上の役割の違いを考える必要がある。福祉用具の変更を提案する際には、専門相談員が利用者に適していると考えるだけでなく、その根拠をケアマネにも理解してもらうことが不可欠だ。評価シートは、利用者の状態や導入後の効果を客観的に示し、製品を提案する理由を共有する材料にもなっている。

シートを活用し始めてからは、ケアマネからの反応も様々だ。もともと福祉用具に関心があり、導入による利用者の変化を重視するケアマネからは「分かりやすい」と高評価。特に、多職種の意見や評価、短期・長期目標との関係を確認できる部分には関心が高かったという。一方、シートに対してあまり興味を示さないケアマネもいるといい、今後どのように連携を深めていくのかが課題だと話す。

この取り組みを始めてから、既存のアセスメントに加えてシートを記入しているため、専門相談員として仕事量は増える。青島さんも「作業の負担は増えました」と苦笑する。それでも、シートをきっかけにケアマネと利用者の状態を話し合う機会が増えており、柴崎さんはシートを活用し始めてから、多職種と密に情報を共有することの意義を強く実感しているという。

福祉用具の効果を伝え、利用者の生活をより良くするために、専門相談員自身がチームケアにどう関わっていくのか。職種間の立場や役割の違いを「仕方がない」で終わらせるのではなく、自ら情報を発信し、対話の機会をつくる。青島さんらが始めた試行錯誤の取り組みは、福祉用具の専門性を多職種の中で生かすための一つのアプローチといえる。


フランスベッドメディカル杉並営業所の青島玲央さん(右)と柴崎ほのかさん(左)


実際に活用する評価シート

ページトップへ