- 2024/04/16
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特養 葛飾やすらぎの郷
介護リフトは、労働環境改善やケアの質向上に貢献する機器の一つだが、その良さはまだ十分には知られていない。利用者や家族はもちろん、働く介護職のために、その導入や周知に取り組んでいる施設・事業者を紹介する。
「葛飾やすらぎの郷」は社会福祉法人すこやか福祉会が運営する、入所定員96人の従来型の特別養護老人ホームだ。2001年に開設した葛飾やすらぎの郷は、介護保険黎明期から積極的にリフトを使ってきた実績がある。
「ここを立ち上げる時には、最初からリフトを導入しようと決めていたんです」
開設当時、施設のオープニングスタッフを務めていた介護部長の福留孝枝さんはそう話す。「持ち上げない介護」と叫ばれてしばらく経つが、介護の仕事における腰痛は長年職業病として扱われてきた。しかし、葛飾やすらぎの郷では、リフトの導入は確実に介護職員の負担軽減につながるとして23年間リフトを使い続けている。機器の入れ替わりはあるが、開設当時の「持ち上げない介護」という方針がマニュアル化され、受け継がれているというから驚きだ。
「リフトの活用は利用者にとっても良い影響があるんです。100歳近い人になると、力ずくで移乗介助しようとすると痣を作ってしまうこともあります。怪我をさせないためにも、リフトは積極的に使いますね」
ただ、リフトの導入は試行錯誤の連続だ。葛飾やすらぎの郷では、天井走行・床走行・支柱設置型などのリフトを活用しているが、スタンディングリフトだけは導入してもうまく使えないという長年の課題があった。
「どうしても対象者が限られてしまうんです。だから、デモ機を導入しても“難しいね”で終わっていました」
そんなとき、葛飾やすらぎの郷で使っているおむつメーカーのユニ・チャームから「色々なメーカーのデモ機を導入して試してみるといいですよ」とのアドバイスがあったという。福留さんはその言葉を受けて、異なるメーカーのデモ機を導入。使えそうな利用者に試してみることにした。すると、試しているうちに「この人は前方支持だ」「後ろに突っ張る人にはこの機器を試そう」など、利用者に合う機器が分かってきたという。「やっぱり必要かどうかは試してみなければ分からない。そのうち、あると便利ということにも気づいていきます」。デモ機だったため一度メーカーに返したというが、職員からも好評だったため来年度の予算に組み込むと話していた。
リフトの導入は、手間や予算などから導入を渋るという事例も多い。しかし、葛飾やすらぎの郷のように、職員の負担軽減とより良いケアを追求している施設もある。とにかく使ってみることがノーリフティングケアの第一歩となるはずだ。