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訪問介護報酬引き下げ 事業所に対応策を助言 ホームヘルパー協会・境野会長
  • 2024/05/28
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国にも支援要請

2024年度介護報酬改定で訪問介護の基本報酬が引き下げられて1カ月半。「すでに事業経営へのマイナス影響が出ている」と話すのは日本ホームヘルパー協会の境野みね子会長だ。新たな処遇改善加算や認知症専門ケア加算などが「絵に描いた餅」にならないよう、国に対し具体的な支援を求めている。

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基本報酬引き下げについて、「処遇改善加算の加算率を最も高く設定しているので、トータルではプラス」と説明してきた厚生労働省。境野会長は「それは事実と異なる」として、自らが千葉県市川市で経営する訪問介護事業所をモデルに、今年3月までの報酬と、新たな処遇改善加算がスタートする6月以降の報酬を比較した結果を示した。

身体介護の提供時間が30分以上60分未満(身体2)で、介護職員処遇改善加算を算定していない事業所は改定後に時間単価が96円マイナスに。改定前に処遇改善加算Ⅰ・特定加算Ⅰ・ベースアップ加算を算定していた事業所でも、一本化後に最も高い処遇改善加算Ⅰを算定したとしても、31円のマイナスになるという試算だ。

新加算を計算し、新しい賃金規程を作成する作業をサービス提供責任者が片手間で行うのは困難なため、事務員や社会保険労務士の力が必要になる。同社では個々のヘルパーの勤続年数や資格取得状況に応じた賃金を自動計算するため新たなシステムも導入。こうした人件費や経費は、基本報酬からまかなうしかない。

「小規模な事業所が、事務員や社労士を確保するのは難しく、結果的に加算算定をあきらめる例は少なくありません。未算定にはちゃんと理由があるのです」(境野会長)

同協会は厚労省に働きかけ、昨年から月1回程度のペースでオンライン等で話し合いを実施している。その中で加算を算定できない事業所の実情を訴えたところ、訪問介護の関係団体に対し新加算の算定方法などについて厚労省が説明会を行ったという。また、これまでほとんど算定実績がなかった認知症専門ケア加算についても、算定しやすくするための計算方法の見直しなどの要件緩和を引き出した。

それでも会員からの悲痛な訴えは相次いでいる。中山間地域の利用者宅を訪問している事業所からは、ガソリン代高騰に加え報酬引き下げで“遠方の利用者を断るしかない”という声が。新加算だけで年2・5%のベースアップはできないとの訴えもあった。相談には、協会各支部が具体的な対応策を助言している。

「苦しいときはみんなで乗り切らなくては。3年後の報酬改定では報われるようにしたい」

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