- 2024/07/16
- バックナンバー
- 最新ニュース
危機への対応策提言
日本ケアマネジメント学会の白澤政和理事長は、6月22・23日に横須賀市で行われた同学会の研究大会で「ケアマネジメントの危機と対応」をテーマに講演した。ケアマネジャーが辞めていく背景には、「専門職としてやりがいのある仕事になっていない点」があると指摘。魅力ある仕事とするためには、ケアマネジメントは介護保険を超えた対応をし、家族をも支える仕組みとする必要があると訴えた。
白澤理事長によると、居宅介護支援事業所、予防支援事業所は4年間で2千カ所減少。特に居宅介護支援事業所のケアマネは減少し続けており、「ケアマネ難民が出てもおかしくない状況」という。ケアマネ離職の背景には賃金などの処遇問題があるとされるが、「専門職としてやりがいのある仕事になっていない点が大きい」と指摘した。
白澤理事長らが3年前に行った調査で、離職経験のあるケアマネに理由を尋ねたところ、「法人や事業所の理念や運営の仕方への不満」が最も多く、「専門性や能力の発揮ができない職場」が続いた。改善策として、①ケアマネが介護サービスを家族や利用者のニーズに合わせて提供できるようにする②ケアマネジメントによる介護保険制度を超えた対応の必要性を社会や制度が認識し、報酬を含めた評価を検討する――の2点を挙げた。
①については、ケアマネが管理者側でも保険者側でもなく、利用者・家族の立場に立って仕事ができる環境を整えるのが社会や制度の側の責任と強調した。
②については「介護保険の枠内でケアマネジメントはできないことははっきりしている。医療だけでなく、生活保護や、インフォーマルサービス。こうした業務の重要性について介護報酬も含め評価する仕組みを構築し、ケアマネが誇りを持って社会資源の開発や地域ケア会議、生活支援コーディネーターなどと連携できる体制をつくることが重要」と訴えた。また、地域共生社会の構築に向け、高齢・障害、子ども支援、8050問題、ヤングケアラーなどの問題について、他分野の相談機関が連携して支えていく必要があるとした。
今年度の介護報酬改定については、居宅介護支援費は上がったものの、「国家資格を取得後、実務経験5年以上の人たちの給与を支払うのにしかるべき報酬になったかというと課題がある」。
ケアマネ1人当たりの取扱件数を増やし、ICTを活用したモニタリングを可能にした点についても「ケアマネ減少に対する緊急避難的対応だったと認識しているが、見直しによる件数の増加で利用者の支援の質低下や、ケアマネのバーンアウトを引き起こさないのかについて、実証的に検討する必要がある」と述べた。