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地域とのつながりを施設の評価に 先進法人が実践を報告
  • 2024/08/06
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鉄道弘済会 「施設の使命」でセミナー

鉄道弘済会(文京区、森本雄司会長)は7月6日から2日間、社会福祉セミナー「社会福祉施設の今日的使命を問う」をオンラインで開催した。地域移行が推進されている一方、施設入所には、家族介護や在宅介護の限界を支える最後の砦としての役割が期待されている。現在の入所施設の役割は何か。他分野の事業や地域とつながる取り組みを実践している社会福祉法人による報告が行われた。


写真提供:鉄道弘済会

報告した3つの社会福祉法人の共通点は、障害と児童、高齢と障害など複数分野の事業を展開していることに加え、地域の他法人・他分野とも連携している点だ。

社会福祉法人ライフの学校(仙台市)は、15年前に50床の特養ホームを開設。高齢分野の社会福祉法人だったが、田中伸弥理事長の兄がバイク事故で身体障害や、高次脳機能障害を負ったのをきっかけに、法人名や理念などを見直し、すべての人の支援をミッションとした。

小学生の親から子供の居場所として駄菓子屋を作ってほしいと言われ、特養の中に作った。精神疾患のある人を積極的に受け入れる目的で「就労継続支援B型」を開設。他の事業所では1年続かず入院を繰り返していた障害者が、ライフの学校では入院せずに生活を継続できた。地域密着型のデイやショートステイも共生型サービスにした。 施設での看取りについても田中理事長は、「特養での看取りというと、肉体的な死のことがクローズアップされがちだが、特養入所により地域との今までのつながりが途切れ、社会的な死を迎えることの方が問題。特養が地域と地続きであり続けることが大事だ」と述べた。

社会福祉法人福祉楽団(千葉市)は、千葉県と埼玉県で特養や障害者の就労支援、生活介護、放課後等デイサービスなどを展開。特筆すべき独自事業が食肉や農産品の製造・販売などを行う「恋する豚研究所」だ。12年前から開始し、現在の売り上げは年間5億円。

豚を8千頭飼育し、加工、販売に至る一連の過程で約30人の障害者が働く。平均工賃は7~8万円、10万円超えの障害者も複数人いる。

福祉楽団の飯田大輔理事長は、「最初にまず稼げる仕組みをつくって、そこに福祉を組み込んでいる。それぞれの仕事のマニュアルを作り、認知症のある人や障害者もできるようにしている」と話す。地域の商店や工場などと連携して商品を開発する機会も生まれ、特養としても外部とのつながりができている。

「顔の見える関係があることで、価格競争だけにならずに済む。入所施設がダメということではなく、ちゃんと地域に開かれているかを評価基準とする必要がある。困ったときに福祉サービスが使える地域にしていかなくてはならないし、それができる事業者を地域で育てていかなくてはならない」と訴えた。

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