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働きやすい職場に人は集まる! 特養 六甲の館
  • 2024/11/05
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持ち上げない介護の定着で人材確保も

職員の待遇改善・人材育成・生産性向上などで優れた取組を行った介護事業者に対し、9月3日に首相官邸で表彰が行われた。今年度内閣総理大臣表彰を受賞したのは、特別養護老人ホーム六甲の館(社会福祉法人弘陵福祉会)。同施設が取り組んだノーリフティングケアや、外国人が働きやすい環境整備などの取組が評価されたという。

六甲の館は、入所定員70人の従来型特養。「利用者ファーストのための職員ファースト」という理念を掲げ、2019年からノーリフティングケアに取り組んでいる。

介護保険制度の黎明期からリフトを導入していたという同施設。ただ、職員全員がきちんとリフトを扱えていたわけではなく、人手不足も重なって人力介助に頼ってしまい、「介護がしんどい」と訴える職員が多かったという。

ノーリフティングに取り組む契機の一つとなったのは、人力介助を行っている際に女性職員が男性利用者から受けたセクハラだ。職員を守るためにも、これまでの介助の方針を改め、男性利用者の人力介助を原則として禁止した。そこから少しずつ「リフトを使うのが当たり前の文化」を作り、現在では全部で27台のリフトが稼働。ノーリフティングケアが定着し、腰痛を訴えていた職員も3年で47%も減少したというから驚きだ。

外国人の日本語習得や生活費など施設で支援

同施設では30人の介護職員のうち、外国人が11人。3割を超えている。コミュニケーションにギャップはないのかと尋ねると、「六甲の館に就職したいという方には、日本語学校に通うための授業料や生活費を全額支援してきました。その後、介護福祉専門学校に通うための支援もしてきました」と施設長の溝田弘美さん。この方法で介護福祉士を取得し、新卒として六甲の館に就職した外国人は実に5人。

また、今年には神戸市やJICA、大学などが連携した「神戸モデル」という制度を通じて、来日した1期生(特定技能)の外国人職員を1人受け入れた。ただ、日本語の習得に苦労しており、コミュニケーションに難もあった。溝田さんは、日本語学校の先生に依頼し、外国人職員にはオンラインで日本語を学んでもらいながら働いてもらっている。費用は施設の全額負担だ。

「新しく入った外国人職員には、同国の先輩外国人職員がノウハウを教える仕組みを採っています。日本語能力の不足を母国語で補ったり、生活面のサポートもしてくれたりするので、結果的に介護業務の習得が早くなるんです」

六甲の館では、これらの働きやすい環境整備が功を奏し、年880時間あった残業時間が、76時間まで削減するなど劇的に改善。職員の有休取得日数も増加し、人力介護が不安という人から求人への応募も増えている。

「取組は、取り組む文化を作らないと定着しません」(溝田さん)

ノーリフティングケアをはじめとした職場環境の改善は、生産性向上にとどまらず人材確保にも直結、結果として利用者ファーストの介護につながるのだ。

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