- 2024/12/10
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11月11日に施行された「京都市ケアラー支援条例」は、市民活動と市民の代表である全市議会議員による協働作業を重ねて実現した、全国でも珍しい制定プロセスを持つ条例だ。それを祝して11月23日に公開学習会が開催。条例をプラットフォームに、あらゆるケアラーに対する社会的な理解と具体的な支援を広げていこうと、改めて決意を共有した。
ケアラー支援条例は2020年、埼玉県が全国に先駆けて制定・施行して以降、24年11月末現在、31自治体まで広がりを見せている。なかでも京都市の条例は全議員の共同提案、全会一致で制定されるという、全国的にも珍しい形で誕生した。
「当事者ではなくても、ケアする人への支援を他人事ではないと思ってもらえるような社会を目指したい。京都ならではの条例がその根拠になると確信している」。学習会に参加した京都市会の「京都市ケアラー支援条例制定プロジェクトチーム(PT)」の座長を務めた寺田一博さんは、条例制定・施行への喜びと期待を力強く語った。
議員だけの力ではないのも特筆すべき点だ。最初に動いたのは市民活動団体。認知症や障害児者、不登校、引きこもり、男性介護者支援などケアにかかわる19の団体・組織から参加した25人の共同代表世話人によって、条例の制定を目指して活動する「京都ケアラーネット」が設立された。公開学習会を頻繁に開催して市民や議員に条例の必要性への理解を呼びかけてきたのである。だが、今年4月、ケアラー支援の充実を求める議会での質問に対し、市は重要性を理解しつつも条例制定には後ろ向きな答弁を繰り返した。その直後に市会が全議員提案による条例制定の取り組みを進めていくことを発表。その言葉通りPTを発足させ、京都ケアラーネットと二人三脚で活動し、半年後に見事全会一致での制定となった、というドラマチックな経緯があったのだ。
「全てのケアラーの声に応えてくれた英断であるとともに、その思いが十二分に込められた条例文が出来たことも画期的」(京都ケアラーネット代表世話人・立命館大学名誉教授・津止正敏さん)。津止さんは京都市ケアラー支援条例について、条例の意義を表す前文が他の条例と比べて圧倒的なボリュームがあることや、ケアラーの定義も政府のヤングケアラー定義を流用せず独自に定義したこと、さらに財政措置についても努力義務規定にしなかったことなど細部にわたって京都ならではのこだわりがあることを強調した。
参加者からは「条例はケアに満ち溢れる社会への第一歩。これからみんなで育てていこう」と今後への期待の声も相次いだ。