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理念の具体化で目的意識高める 利用者本位と両立で15年連続黒字経営 HTC「我が家」
  • 2025/05/20
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札幌市を中心に在宅サービスを展開するHTC(札幌市、臼井宏太郎代表)は、創業から15年連続で黒字経営を続けている。同社が運営する主力事業のデイサービス「我が家」は、利用者本位の姿勢と企業理念を従業員へ浸透させていることなどにより、高い顧客満足度と安定的な経営を実現している。

2009年に創業したHTCは、デイサービスや訪問看護など10拠点で展開する。創業以来全事業所で黒字化を達成し、利益率は25~35%にも上るという。

「職場の雰囲気が悪くギスギスしていると感じました。そこから『関わる全ての人が幸せになれる会社を作りたい』と創業に至ったんです」

話すのは、HTCの臼井宏太郎代表だ。もともと外資系ホテルやコンサル業などで働いていた臼井さん。コンサルとして札幌市の介護事業所の依頼を受けた際、当時見た多くの介護の職場において、閉鎖的で雰囲気の悪さを感じた経験などから、介護業界の変革を目指しHTCを起業した。


臼井さん

HTCの理念は「我が家に関わる全ての人の幸せ」。理念は設定後、お飾りになってしまう企業も少なくないが、HTCでは理念の実現方法を▽存在目的▽事業目的▽目標▽具体的施策――の4つに分けて示した「ロジックツリー」として全社員に共有。抽象的な理念を具体的な行動指針に落とし込み、利用者の満足と会社の利益を両立させる経営を確立した。

また、事業所の月次会議では、パートを含む全員が持ち回りでロジックツリーをプレゼンテーション。売上目標と現状を日々確認し、不足時には行事企画や振替提案などを通じてスタッフ自らが積極的に動く。一人ひとりが目的意識を持つことにより、高い稼働率や利益率を実現している。


理念実現に向けたロジックツリー

入浴拒否の利用者にも興味を引くきっかけを

そんなHTCでは、ケアの取り組みもユニークだ。例えば、我が家 円山公園では入浴介助専門スタッフを配置する。スタッフの北瞳さんは今年から、ゆず湯やりんご湯などで特別感を演出する「変わり湯作戦!」を企画。利用者からは「昔に行った温泉を思い出す」と好評で、入浴拒否のある利用者にも「今日は変わり湯ですよ」と興味を持ってもらうきっかけになっている。


北さん

「我が家のお風呂は家庭と同じようなユニットバスで、ご家庭とあまり代わり映えしません。なので、少しでも特別感を演出して利用者に入浴の時間を楽しんでもらえればと思いました」(北さん)

入浴ケアでは「できる限り自宅で望む暮らしを続けたい」という利用者の要望に応えるため、利用者の居宅を訪問し自宅の浴室と近い環境で入浴介助なども行っている。これにより、全国で1割程度しか算定していない「入浴介助加算Ⅱ」をHTCの事業所の5割以上で算定。困難なケースも断らず、利用者と家族に寄り添う姿勢により、ケアマネジャーからの信頼も厚い。

理念の形骸化を防ぎ、スタッフ一人ひとりが真摯に利用者と向き合う――この積み重ねが、HTCの明るい事業経営を支えている。


りんご湯のポップ

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