- 2025/05/27
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腰痛の実態を数値で見える化
介護現場への福祉用具の普及活動などを行っているNPO法人とちぎノーマライゼーション研究会(宇都宮市、伊藤勝規理事長)は、介護施設で働く介護職員について、現場での腰痛リスクなどを調査・分析するオンラインサービス「介護現場の腰痛リスクチェック~はじめの一歩」を提供している(図1)。施設での腰痛実態や介護職員の負担感を数値で見える化し、施設全体で解決策を話し合う材料にしてもらうのが狙いだ。
【図1】「はじめの一歩」のトップページ
とちぎノーマライゼーション研究会(以下、研究会)は、介護現場への介護テクノロジーの導入・活用に向けた伴走支援を行っている。その中で、「腰痛対策としてリフトやテクノロジーを導入したい」という相談を受けてきた。
「“腰痛対策と言えばリフト”と考えている事業者は多いですが、リフトや機器を導入しさえすれば腰痛がなくなるわけではありません。重要なのは、腰痛という課題を施設全体で見える化して共有し、“みんなで取り組む”という意識を醸成することです」
伊藤勝規理事長はこう話す。
この「見える化」のため研究会では、厚労省が公開している「介護作業者の腰痛予防対策チェックリスト」を活用・改編し、簡単にチェックし、分析できるようオンライン化した。
まず介護職員それぞれが研究会から提供されたQRコードを各自のスマートフォンで読み取り、チェック項目に回答。それを研究会で集計し、分かりやすくグラフ化、各種評価結果も事業者にフィードバックする。図2は集計データの一部だ。
個々の職員の腰痛の有無や、介護場面別のリスクを判定する個別報告書も作成できる。
【図2・集計データ例】介護作業別リスク評価
「はじめの一歩」を利用したある特養ホームでは、79%の職員に腰痛があるという結果が出た。腰痛リスクが最も高い作業はおむつ交換。作業姿勢が不良な人が多かった。
この結果を踏まえ、施設職員に話し合ってもらったところ、ハンドルを回して高さ調整を行う手動式のベッドが原因の一つとして浮かび上がった。多くの職員が手間がかかるとして調節せずにおむつ交換を行っていたのだ。漏れてしまうことも多く、ズボンやリネンまでの交換を余儀なくされることもあった。
とは言え、電動ベッドをすぐに買いそろえるのは難しい。そこで「すぐできる取り組み」として、負担の少ないパッドだけの交換で済むよう漏れないおむつの付け方を研究し全員で実践することにした。一定期間の取り組みの後、再度チェックすると腰痛のある職員が20%程度減少していた。
伊藤理事長は「はじめの一歩」という名称に、“明日からできる対策”を現場で探しだす最初の一歩にしてほしいという思いを込めたと話す。
「はじめの一歩」は全国の事業者が利用できる。同研究会ホームページの「お見積り依頼フォーム」か、問い合わせフォームから問い合わせる。例えば、30人までの職員で統計データのみの場合は3万5千円(税別)。