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「転倒・腰痛予防は事業者の責務」 厚労省 労働環境改善で人材確保も
  • 2025/05/30
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在宅サービスでの対策は課題

 介護職の腰痛が増加し続けている。厚生労働省はこれまでさまざまな施策を打ち出してきたが、さらに一歩踏み込み、「転倒・腰痛予防は事業者の責務」であることを明確化する方向性を打ち出している。腰痛や転倒による労働災害を減らし、働きやすい職場を実現することが、利用者や介護職の獲得につながる――。この考え方を多くの事業者に浸透させていく考えだ。

厚生労働省によると、2023年の全産業における休業4日以上の労働災害は13万5371件で、「介護施設等」はその約1割(図1)を占める。増加スピードも急激だ。過去10年間で介護施設での労働災害は78%増加。さらに、介護施設での労働災害発生率(21年度)も全産業平均の1・6倍。介護分野で働く人が増えると同時に、50~60代の労働者が多いことが労災件数増を加速化させているようだ。

その介護分野の労災の7割は、転倒による骨折などの負傷や腰痛によるものだ(図2)。こうした実態を踏まえ、厚労省は介護分野での対策を進めてきた。

取り組みの中でハードルになってきたのが、「省」の違いだ。24年前の2001年。旧厚生省と旧労働省が統合され、厚生労働省となった。しかし、介護サービスの所管は老健局、労災など介護分野の安全対策は労働基準局という縦割りの意識が長らく残った。介護分野の転倒・腰痛問題が、事業者が行うべき取り組みとして十分に浸透していない背景にはこうした事情もありそうだ。

同省は、2022年には、労働災害の増加が顕著な小売業や介護施設等での対策を検討する「転倒防止・腰痛予防対策の在り方に関する検討会」を設置し、同年9月に中間報告を整理。国などに「ノーリフトケアや介護機器導入などすでに一定程度効果が得られている腰痛予防対策の普及」を後押しするよう求めた。

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