- 2025/06/10
ケアの必要な人を無償でケアする「ケアラー」を支援し、ケアラー支援法や条例の制定を目指す「日本ケアラー連盟」は5月25日、発足15周年の記念イベントとしてケアラー支援の条例化・法制化について考えるフォーラムを開催した。これまでに条例を制定した3つの自治体のキーマンが制定までの経緯とその後の取り組みを報告。さらに法制化の必要性について意見交換した。
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同連盟は2010年に発足。牧野史子代表理事はあいさつで、当時「ケアラー支援の法案の制定」を目標に掲げたことを振り返りながら、15年経った現在も目標を達成できていないと述べた。ただ、この間に、ヤングケアラー支援が国の政策になったことや、ケアラーという言葉が社会的認知を得たこと、ケアラー支援条例が全国33以上の自治体で制定されたことなどを「社会変革」として挙げた。
パネルディスカッションには、これまでにケアラー支援条例を制定済みの北海道栗山町、京都市、藤沢市の代表者が登壇。
栗山町の佐々木学町長は、条例制定への起点は町社協による介護者の実態調査だと指摘。6割の介護者が心身の不安を抱えており、将来的な疾病や虐待につながる可能性があることが分かったのをきっかけに、町が社協によるケアラー支援事業を後押し。ケアラー支援策を推進するためのケアラー支援条例を21年4月に制定した。
条例に基づき町は支援推進計画を策定。町予算で500万円のケアラー支援費を確保したことで、施策がスムーズに運用できるようになり、新たな施策の創出につながったと報告した。
京都市ケアラーネットの津止正敏共同代表は、2022年、3年の間に京都のいずれかの自治体で条例を実現しようという目標を立てて同ネットを発足させた。22年度以降、市に対し条例制定の必要性に関する質問を、議員を通じて毎年行ってきた。「直ちに条例を制定する考えはない」という回答が続いていたが、24年4月、市会が全議員での共同提案による条例制定を進める方針を表明。PTを設置し、ケアラーネットも含めた議論を開始した。昨年11月6日に可決成立(11日施行)。こうした市民参加型の条例制定プロセスが特徴であることも強調した。
藤沢市議会議員で、ケアラー条例案を作成した政策検討会議の座長を務めた竹村雅夫氏は、22年3月に、藤沢市主催で行われたケアラー連盟の堀越栄子氏の講演がきっかけで、超党派で政策検討会議を設置し、党派の異なる各委員が議論し、分担して条例案文を作成。「ケアをされる人もケアをする人も自分らしい人生を送る」という前文を設けた。家族介護者やワーキングケアラー、ヤングケアラーなどの意見もしっかり反映するため、「出張パブリックコメント」を実施。昨年の12月議会で成立し、今年4月から施行された。
条例化は進みつつあるが、目標は法制化だ。各パネリストも「法制化が必要な理由」について述べた。
栗山町の佐々木町長は「条例化したことで政治的・財政的担保ができたことは前進だが、ケアラー支援を国や都道府県が連携し、各市町村へ横展開していくためには法制化は重要」と指摘。津止氏も財政的な裏付け効果を評価した上で、「ケアは社会にとって必要不可欠な要素で重要であるとの理念を書き込み、ケアが困難なものであるという考えを転換させる必要がある」と強調。条例化の加速化が、法制化につながるとした。
竹村氏も法的根拠ができればケアラー支援の活動もしやすくなり、当事者への経済的な保障も行いやすくなると訴えた。
条例制定のプロセスを説明 (写真=日本ケアラー連盟提供)