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AIとケアマネの分担で質の高いケアプランを 東京ケアマネ実践塾
  • 2025/06/17
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現場での活用状況を報告

東京在勤・在住のケアマネジャーの資質向上と次世代ケアマネジャーの育成を目的に開催している「東京ケアマネジャー実践塾」(岡島潤子理事長)は5月29日、AIを活用したケアマネジメント実践法をテーマに開催した。訪問介護大手「やさしい手」(目黒区)の香取幹社長が講師を務め、同社におけるAI活用の実際とともに、ケアマネジメントにおけるAI活用の課題などについて考えを述べた。現場で活用するケアマネジャーも登壇した。ハイブリッド開催で参加者は200人を超え、関心の高さがうかがえた。

「やさしい手」は、独自開発の記録システムや利用者・家族への情報開示システム、顧客管理システム、ケアプランデータ連携システムなどを導入してきた。さらにAIの専門部署を設け、「むすぼなAI」という生成AIも開発。「AIを使ったケアマネジメントによって、利用者の要望に沿った、在宅生活継続を実現するようなケアプランができる」と香取社長が説明した。例えば「むすぼなAI」の音声認識機能を使って、ケアマネが訪問先でiPadを使い、利用者との会話を文字起こしして、それを介護記録やモニタリング記録として活用している。ケアマネジメントの各種帳票の作成や、サービス担当者会議の議事録作成も簡単にできる。

ケアマネジャー業務の肝であるケアプラン作成をAIに頼ることに抵抗のあるケアマネは少なくない。しかし、香取社長は「逆に新たな知識や能力の獲得につながる面が大きい」と強調した。一方で、AIの活用に伴う、説明責任やデジタルデバイドなどの倫理的・社会的課題については、学会などで検討していく必要があると述べた。

AIを活用して作成したケアプランの実例も紹介。在宅で要介護3の利用者と妻、ケアマネとの600字程度の短い会話を元に、1週間に訪問介護、通所リハ、通所介護、訪問入浴介護を組み込んだケアプランを生成。「元の情報量が多いほどより精緻なプランができる」と解説した。

パネルディスカッションでは、「やさしい手」が都内で運営する居宅介護支援事業所から3人のケアマネが登壇し、ICTやAIの取り組みを報告した。

社長の号令のもと全社的にAIを導入することになった当初、太子堂居宅介護支援事業所管理者の遠藤朋美さんは、「ケアマネがAIに取って代わられるのでは」という不安を感じつつ、各ケアマネが40件超のケアプランを担当する多忙な状況を改善しようと、業務効率化の観点から取り組んだ。今は在宅看取りの場面で、刻一刻と変わる利用者の情報を多職種が即座に共有する際に活用しているという。

「AIは正直」と遠藤さん。「不十分なアセスメントやモニタリングをAIにかけると、プランも稚拙なものになる」。自身のケアマネジメントの改善にも活かしているという。

実践塾を主催する岡島潤子理事長は、「事務作業を減らして利用者と向き合う時間を増やすことは、すべてのケアマネジャーの希望だと思う。その実現のためにAIを活用することが重要だ」と結んだ。


3人のケアマネジャーがAIの活用について語った

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