- 2025/06/27
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介護の現場では、利用者が可能な限り自立した生活を送れるよう、さまざまな専門職が連携して支援を行っている。生活援助や身体介護のほか機能訓練なども行われるが、その中核を担うリハビリテーション専門職の一つが、身体機能の維持や回復にあたる理学療法士(PT)だ。現在、PTの就職先の約8割が医療機関だが、利用者の能力を引き出すその高い専門性は、介護の現場でも求められている。
高齢者人口の増加に伴い、リハビリテーション専門職が活躍する場面も広がっている。一方で、その供給量は年々増えており、一部のPTからは新卒で病院に就職するのが難しいとの声もある。
厚生労働省が2019年に開催した「医療従事者の需給に関する検討会理学療法士・作業療法士分科会」で報告されたPT・OT(作業療法士)の需給推計によると、2040年には供給数が需要数の約1・5倍に達する可能性があるとしている。実際、PTの国家試験合格者数は年間約1万人ペースで増加しており、一昨年度までの合格者累計は約23万人を超える。
このような状況を踏まえ、PTの職域が回復期医療に偏在しすぎているという課題も浮かび上がる。要介護者数も膨らむなか、今後介護分野でPTの活躍の場の拡大が期待される理由は大きい。
「PTの活躍の場は医療の現場だけではありません。介護の現場では、身体機能だけでなく、認知機能や生活能力といった複合的なニーズに向き合う必要があり、医療での対応を理解しているPTが果たせる役割はむしろ広がっています」
そう話すのは、日本理学療法士協会の斉藤秀之会長だ。斉藤会長はPTが介護現場で果たすべき役割について、「お世話ではなく〝自立支援〟=“介護負担軽減”と“協働”の視点で関わることが重要」と強調。理学療法などを通じて自立支援にも寄与できるほか、多職種と連携して環境や動作を調整していくPTの専門性は、まさに介護現場でこそ発揮されるものだと話す。また、利用者の残された力を引き出すことで生活の質を高め、介護職の負担軽減にもつながる可能性もあるとした。
しかし、PTの就職先に選ばれるのは圧倒的に医療機関が多い。では、PTが介護分野で働くことに、どのような魅力があるのだろうか。(以下略)