- 2025/08/26
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外国人材の有料紹介事業などを手掛ける協同組合「マンパワーサポートはままつ」(マンサポ、静岡県浜松市)は、中小企業で働くベトナム人に向けた教育動画の配信を行っている。日本企業が重んじるコミュニケーションや思い遣りの大切さなどを動画で学んでもらうことで、企業と人材のミスマッチによる退職の防止に貢献することが狙いだ。
代表の吉田茂さんは、25年以上に渡り、技能実習生を支援する組合で勤務した後、2015年に独立しマンサポを設立。外国人・受け入れ企業・支援者の信頼関係を構築し、外国人の失踪などの問題の解決につなげたいと思ったことがきっかけだった。組合法人は全95社で、建設業や外食産業を中心とした法人が加入している。
介護業界では今年4月に、訪問系サービスで技能実習と特定技能の受け入れが解禁。外国人材の需要が高まる中、定着が課題となっている。吉田さんは「多くの中小企業の現場で外国人材とのトラブルが起きています」と話す。マンサポの組合法人からは、言語の壁によりコミュニケーションに問題が生じ、指導内容が伝わらないなどの声を耳にしていたという。
「人材と事業者が、互いの国民性や価値観に理解を深め、ミスマッチを防ぐことが必要だと考えたんです。まずは外国人材の国別人数で約半数を占めるベトナム人を対象に社員教育研究会を設立し、約1年半前に教育動画の制作を開始しました」(吉田さん)。
約20分~30分の動画を基礎編4本、応用編8本の計12本で構成。時間や場所を問わずにスマートフォンなどで試聴でき、研修などにも気軽に活用できる。日本で働く上で重要な心構えについて、日本語とベトナム語の2言語とイラストを用いて解説を行う。
教育が目的なのであれば、日本語での解説は不要ではないだろうか。その訳を尋ねると、吉田さんは「ベトナム人と事業者が一緒に試聴することに意義があります」と力強く話した。動画では、ベトナムでは周囲を思い遣ったり、他者からの評価に関心を持ったりする文化が浸透していないことを示唆している。視聴した事業者からは、「国民性を理解できたことで関係性が良好になった」という声も挙がっているという。ベトナム人材からは、「周りの人との信頼関係や協力が法人利益、ひいては自身の報酬につながること」などへの気付きの声が寄せられた。
「彼らは、自国に残した家族の暮らしを支えるため、お金を稼ぐことが目的で、海を渡って日本に来ている――。その境遇を思い遣ることが事業者には求められています」(吉田さん)。現場で働く人への感謝を忘れないことが、人材不足の解消への一歩になるのではないだろうか。動画はベトナム人社員教育研究会に入会した後、配信を受けることができる。入会方法・料金はホームページを参照。
吉田さん
事業者からは日本人の若手に見せたいという声も