- 2025/09/02
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一つの事業所で職員が交代で通所・訪問・宿泊などのサービスを提供する小規模多機能型居宅介護。サンライズひのでだんち(東京都日の出町)の職員は、「住み慣れた地域での在宅生活を、暮らしに根付いたケアで多面的に支えること」が小多機の魅力だと話す。
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15年前に開設した同法人の小多機事業所のサテライト拠点として、2018年に開所したひのでだんち。介護士・看護師・ケアマネジャーを含めた9人の職員が働いている。利用者数は20人で、多くの人が認知症でありながら平均介護度はわずか1・5。通所と訪問の併用者が7割を占めており、宿泊を利用する人はごく少数だ。
事業所が位置するのは山沿いで、大きな坂道の途中にある。最寄駅からの距離は徒歩40分ほど。
「交通の便が悪く、買い物や町役場に一人で行くことが難しいという声が、地域の高齢者から多く寄せられていました」
開所したきっかけについてそう振り返るのは、管理者を務める関澤亜樹さん。福祉の拠点を創ることで、住民同士のつながりや助け合いを促進し、住み慣れた自宅での暮らしを継続できると考えたという。
利用者の毎日の生活を大きく支援しているのが訪問介護。小多機は通常の訪問介護と比べて提供内容に規制が少なく、利用者の要望に柔軟に対応できることが特徴だ。買い物や通院、服薬の介助のほか、「エアコンの操作やゴミ捨てなど、些細なサポートで喜ばれることが意外と多いです」と関澤さんは笑う。
小多機のやりがいは「生活に根付いたケアで、利用者さんを多面的にサポートできること」。そう力説するのは職員の守山万理奈さんだ。通所や宿泊に加えて、生活環境でケアを行うことで、一人ひとりをより深く知ることができるという。「部屋に飾られている写真や、趣味の道具に着目することで会話がはずみ、心の距離もグッと近付きます」と目を輝かせた。
また、利用者の状態に応じて臨機応変にサービスを提供できるのも魅力の一つ。「来所したくなければ事業所で提供している配食サービスを活用し、ご自宅でお弁当を食べてもらう。または、訪問による安否確認に変更するなど、柔軟に対応しています」(関澤さん)。
通所では、利用者の楽しみを創出するためにレクリエーショひンに力を入れているという。2年前のお正月には、神社にお参りに行くことが難しい利用者のために、事業所内で大きな鳥居や賽銭箱を手作り。おみくじや御朱印などを楽しんだ利用者からは「手の込んだ仕掛けが楽しい」という声が寄せられた。
飛行機に乗って北海道で旅行に行く気分を味わうイベントも開催。職員がキャビンアテンダントに扮し、機内アナウンスを再現した。そのほか、北海道の民謡「ソーラン節」を披露したり、昼食にはメロンを提供したりと、非日常を楽しむ様々な工夫を凝らしたという。
3つのサービスを駆使して利用者の暮らしを包括的に支える小多機。経営者には相応のマネジメント力、職員には多様なスキルが求められ、負担が大きいのは事実だ。関澤さんは「介護のスペシャリスト」として自身を奮い立たせ、今後も継続的なサービス提供を目指すと意気込みを語った。
左から関澤さんと利用者の夫婦、職員の皆さん
お正月のレクの様子。「やるからには何でも本気で!」がひのでだんちのモットー