- 2025/09/25
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介護人材の確保・定着などを目的として、各自治体などでモデル事業なども行われている「週休3日制」。その名の通り1週間のうち休日を3日とすることで、年間休日数の増加や残業時間の削減を図れる一方、1日10時間勤務になったり、シフトが組みづらくなったりするなど課題も多い。福島県伊達市にある特別養護老人ホーム星風苑(社会福祉法人慈仁会)では、週休3日制の導入後、常態化していた残業時間が大幅に減少し、求人への応募も増加するなど、一定の成果を出している。
福島県北部の山あいにある星風苑は、90床を擁するユニット型の特養。2004年に開設され、ショートステイ10床やケアハウスも併設する。職員数は約90人。人手不足が続くなか、同施設が週休3日制の導入を検討し始めたのは4年前のことだ。
「当時は日勤と夜勤のつなぎで月20~30時間の残業が常態化しており、スタッフの不満も大きかったと思います。そんな時に、福島県で週休3日制のモデル事業があり、何かを変えなければという思いから導入に踏みきりました」
施設長の鈴木忠彦さんはそう話す。福島県が進める週休3日制の補助事業に参加し、半年間に渡って説明会や個別面談を重ねた。その後、2022年1月から星風苑の一部ユニットで導入を開始し、同年4月から施設全体へと広げている。
導入にあたっては、勤務時間を1日8時間から10時間に延長し、週の中で3日の休みを確保。夜勤体制を6人から5人に減らし、シフトを再設計した。働き方の変化には不安を覚える職員もいたというが、職員との面談を通じて丁寧に説明や合意形成を図った。
「どのように働きたいかは職員によって違うので、不安や希望などは個別の面談で解消していきました」(介護課長・佐藤正人さん)
効果は数値にも表れている。年間2636時間の時間外労働を削減し、人件費にして約397万円分に相当するというから驚きだ。勤務の調整も容易になり、勉強会や会議も勤務時間内で完結できるように。導入後の職員アンケートでは7~8割の職員が「満足」と回答し、「子どもと過ごす時間が増えた」「資格取得の勉強に充てられる」といった声が寄せられ、求人でも「週休3日制」を目的に応募する人が増加したという。
一方で課題も残る。1日10時間勤務は体力的な負担が大きい。また、休みが増えたことで職員同士が顔を合わせる日数が減少し、職員からは情報共有の難しさも指摘されている。これに対し星風苑では、インカムやグループチャットなどを活用し、業務の効率化と円滑なコミュニケーションで改善を図る。見守り機器なども導入し、夜勤の配置見直しによる負担軽減に取り組んでいる。
星風苑では今後、週休2日制と3日制の「選択制」の導入も検討中だ。子育てや介護など家庭事情に応じ、多様な働き方を選べるようにする。鈴木さんは「導入を維持するには一定の職員数が不可欠。採用と定着、そして働きやすさの工夫を重ねていきたい」と話す。介護現場における厳しい人材獲得競争のなか、週休3日制は一つ選択肢となりえるか、今後の動向にも注目だ。
鈴木施設長(右)と佐藤介護課長(左)