- 2025/10/14
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効率回収や解体容易化などリサイクルへさまざまな施策
日本は昨年からサーキュラーエコノミー(循環経済)を国家戦略と位置付けて、関係省庁が連携し、官民一体となって取り組みを進めている。あらゆる分野で使い終わった製品を「廃棄物」ではなく、「資源」としてとらえ、リサイクルして循環させていくことが求められている。しかし、なかなかリサイクルが難しいものが多く存在しているのが現状だ。医療・介護現場で必要不可欠な「ベッド」もその一つ。今回はそうしたベッドリサイクルの事例を紹介する。(環境新聞編集部・黒岩修)
ベッド本体、フレームのリサイクル推進に向けた課題としては、「回収」がある。資源としてリサイクルを進めるには、ある程度の量を集めることが必要だ。医療・介護用ベッドの耐用年数は8年程度と言われ、定期的に大量に排出されるものではないので、効率よく量を集めることが難しく、資源量の確保やコストの面がネックとなっている。
一方、マットレスについては、特にスプリング入りのものは解体に手間や費用がかかり、廃棄物処理法の「処理困難物」に指定されている。
これらの課題を解決してサーキュラーエコノミーを実現させるため、先進的なメーカーがさまざまな取り組みを進めている。ベッド本体のリサイクル推進では、パラマウントベッド(江東区)は効率的な回収を実現させるため、環境省の広域認定制度の認定を業界に先駆けて2012年4月に受けている。本来廃棄物の運搬や処分を行うには、当該地域の自治体から許可を受ける必要があるが、メーカーが同認定を受ければ、廃棄物処理業の許可を受けずに自社の製品を回収、リサイクルすることができる。
同社はこの制度を活用して、使用済みの同社製の医療・介護用ベッドの再資源化に取り組んできた。現在では全国約2700事業所の協力のもと、広域認定に基づく同社の処理量は年々拡大しており、24年度には累計1万2千tを超えた。再資源化されたベッドの累計台数は約8万5千台にのぼり、再資源化率は99%を達成している。
今年の夏ごろから、この資源の効率的な再生利用と廃棄物の適正処理に関する活動を、「RE―BED project」と名付け、本格始動させている。さらに、同社は22年から、使用済み製品を同種の部品へ再び活用する「水平リサイクル」技術の実用化にも取り組んで来た。その成果として、今年8月に発売した在宅介護用ベッド「楽匠Fit(フィット)」には、同社の使用済み「楽匠」シリーズ製品から再生された樹脂材を2%含有した樹脂ボードを採用した。水平リサイクル樹脂を採用したベッドとしては、日本初の事例となった。
一方、マットレスのリサイクルではフランスベッド(新宿区)が、工具がなくても1人でも簡単に分解、分別ができる「MORELIY(モアリー)」仕様のマットレスを22年から展開。マットレスの解体・分別・リサイクルまでの流れを容易にすることで、一般生活者が環境保全に関する活動に貢献できる仕組みを提供している。23年にはモアリーを改良し、より汎用性のある仕様にした容易に分解・分別できるマットレス構造の「MORELIY N」を開発した。当時モアリー仕様の製品は同社全体の約20%だったが、32年までに50%とすることを目指している。
併せて解体・分別が容易なことでリサイクルしやすい構造を持つスプリングマットレスと、アブラヤシの廃材を活用した再生木質ボードを用いたベッドフレームで構成する「エココンフォート電動ベッド」も発売。アブラヤシ廃材を活用した再生木質ボード「PALM LOOPボード」を採用し、廃材から排出される温室効果ガスの削減にも貢献している。IoT対応の薄型電動リクライニングユニットを組み合わせ、エシカルライフスタイルに調和する寝具として展開している。
両社とも「ウェルビーイングの向上」をキーワードに、さらなる展開を模索している。
パラマウントベッドは広域認定制度活用し効率回収。「楽匠Fit」では水平リサイクルも
フランスベッドは簡単に分解、分別ができる「MORELIY」仕様マットレス(右)を展開