- 2025/11/21
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成功体験積み上げ笑顔溢れる職場に
介護現場の生産性向上・職員の待遇改善・人材育成などで優れた取り組みを行った介護事業者に対し、8月27日に首相官邸で表彰が行われた。内閣総理大臣表彰を受賞したのは、特別養護老人ホームもくせい(社会福祉法人北養会)。4年前に導入したものの職員の間で活用方法が浸透していなかったシートセンサー型見守り機器を駆使し、夜間の排泄介助や巡視の時間を削減した。施設長の伊藤浩一さんは「業務負担の可視化と、部署同士の連携を強化したことが功を成した」と話す。
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もくせいは2008年に水戸市に施設を構え、平均要介護度4の入居者70人の生活を支えている。伊藤さんが施設長として赴任したのは4年前。市内に競合する特養が増え、差別化の課題に直面していた。
「総勢85人の職員の中には、開設当時から運営を支え続けてきた人がたくさんいます。施設に対する思い入れの強さ故に従来の業務体制を改めず、人材不足などの課題を組織全体が見て見ぬふりをしていることに危機を感じました」
それを機に取り組んだのが、職員一人ひとりが抱えている業務負担や不満の洗い出し。実施した施設内アンケートでは、多くの職員が夜勤の負担を訴えた。
夜勤者は1フロアにつき3人。一体何の業務が重荷になっているのか。定期的なタイムスタディ調査で、一人ひとりの業務の流れの詳細を把握したところ、巡視とベッド上でのおむつ交換にかかる時間に大きな個人差があることがわかった。
職員へのヒアリングを重ねるうちにもう一つの課題が浮かび上がった。「4年前に入居者の寝返りや呼吸・心拍数から睡眠状態を判定するシートセンサーが全床に導入されたのですが、職員の間では反発が大きかったです。機能や使い方が複雑で、有効活用するまでに至っていませんでした」とユニットサブリーダーの荒井健太郎さんは振り返る。
シートセンサーは入居者一人ひとりが眠っているか、覚醒しているか、離床しているかを検知し通知する。覚醒しているタイミングのみ訪室することで、夜勤者1人あたりの巡視と排泄介助の時間の半減に成功した。職員全体で使い方や機能を一から学び直し、センサーの再活用で入居者の睡眠サイクルを把握したことが解決の糸口となった。
「入居者の方々も睡眠を遮られることが無くなり、よく眠れるようになったと仰っています。睡眠を十分にとることで日中を活発に過ごす方も増えました」と荒井さんはほほえむ。
また、生活相談員で相談室のリーダーを務める齋藤智子さんは「シートセンサーの活用は稼働率の向上にもつながった」と話す。
「センサーが検知する入居者の状態変化から、お看取りの時期が近づく方を把握できるようになりました。空室の見通しが立ちやすくなったことで、新規入居者の方々の受け入れがスムーズになりました」(齋藤さん)(以下略)

