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対話を重ねビジョンを共有 協働で「もっとできる!」未来へ 民間事業者連携 東京城南BASE.
  • 2025/12/02
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東京23区南部・城南エリアで運営する民間の中小介護事業者4社が立ち上げた連携スキーム「東京城南BASE.」が、発足から2年目を迎え活動の幅を広げている。代表を務めるスマイルクリエーションの松橋良さんは「地域の介護事業者が独自性を保ちながら、共通課題を協働で解決する〝土壌〟となれれば」と話す。

東京城南BASE.は、採用難や人材育成、物価高騰など、中小事業者が単独で抱えるには重い課題を協働で乗り越える仕組みとして、昨年4月に設立された。参加するのはAIケアサービス(大田区、相川貴志代表)、カラーズ(大田区、田尻久美子代表)、ケアメイト(品川区、板井佑介代表)、スマイルクリエーション(大田区、田中功佑代表)の4社。一律の理念統一を求めるM&Aやホールディングス化とは異なり、あくまで「各社の文化を尊重したまま必要な部分だけを一緒に担う」点に特徴がある。昨年には一般社団法人も取得し、研修のみを協働化したい事業所も受け入れやすい体制とした。

活動内容も広がっている。採用面ではハローワーク大森と連携し、職員向けの施設見学ツアーや合同面接会を開催。研修は4社合同でオンライン化し、専門研修や次世代リーダー育成プログラムを整備した。また、ブランディング面ではKAiGO PRiDEと連携し、経営者・職員への聞き取りを経て、東京城南BASE.が協働によって目指したい未来を言語化した。「独立性を保ちながらそれぞれのノウハウを持ち寄り『もっとできる!』未来を創る」。本協働の取り組みは商工会議所の労働政策レポートにも紹介され、全国から問い合わせが寄せられている。

一方、協働には課題もある。活動のアイデアが膨らみすぎると、それ自体が課題となってしまいやすい。経営課題の解決を目指して始めた協働が「目的化」してしまうと本末転倒だ。よって、活動の優先順位をつけることが必要不可欠となる。

4社の文化や運営の違いを踏まえ、「何を協働で行い、何を各社の独自領域とするか」をすり合わせるには、経営者・現場の職員ともに時間をかけた対話が欠かせない。実際、東京城南BASE.の構想が始まってから今日まで、4社の経営者同士では70回近くの対話を重ねてきた。

「枠組みにフリーライドできてしまったり、対話が足りずにやりたいことが異なったりすると、協働化には空中分解の懸念があります。だからこそ、方向性を明確にすることと、経営者や現場の職員同士の対話・交流が大切です」(松橋さん)

東京城南BASE.が強調するのは、「M&A以外にも地域の事業者が生き残る道はある」という点だ。政府が中小介護事業者の大規模化を推進するなか、人材不足・経営不振などの課題に振り回された事業者は、廃業やM&A以外の選択肢を見出しにくい。松橋さんは「協働化は、地域の介護を支える民間事業者が倒れないための第3の道。全国でも同様の取り組みが広がってくれたら嬉しいです」と話す。地域に根差した介護事業者の新たな協働モデルとして、今後の展開にも注目したい。


松橋良代表


4社共同でツアー型の説明会なども。人材の共有も見込む

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