- 2025/12/16
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介護現場における口腔ケアのサポートを手掛けるクロスケアデンタル(福岡市、瀧内博也代表)が、誤嚥性肺炎の入居者を減らすことができた施設を表彰する「ゼロプロアワード」。大分県由布市の特別養護老人ホーム若葉苑は、7月10日に行われた表彰式で昨年に引き続き2年連続でグランプリを獲得した。施設長の原田禎二さんは「職員全体で、口腔ケアの知識と手技の理解度を高め、ブラッシングや口内のマッサージを習慣化したことが功を成した」と話す。
2021年度の介護報酬改定で口腔衛生管理体制加算が廃止され、基本サービスとして口腔衛生の管理が義務付けられた施設系サービス。3年間の経過措置を経て24年度から、歯科医師からの技術に関する助言・指導や、管理計画の作成が求められるようになった。
誤嚥性肺炎によって入院する入居者が多かった若葉苑は、義務化に備えて23年から口腔ケアの取り組みを強化。クロスケアデンタルの指導のもと、ブラッシングと口内マッサージを3日置きに週2回実施するようになった。
マッサージはともかく、ブラッシングは毎日行わなくてもいいのだろうか。原田さんに尋ねると、ブラッシングによって歯の汚れが取り除かれた清潔な状態から、口内がネバネバし始めて細菌が付着しやすくなるまでの期間は3日間なのだという。
「今まではこのような知識も職員ごとに個人差があり、ブラッシングのやり方や使用する歯ブラシの種類もバラバラでした」
知識や詳しい手技はクロスケアデンタルが行うセミナーで習得。初級・中級・上級の3段階に分かれ、各級ごとに試験を行い着実なスキルアップを目指している。中級では、口唇、舌、歯肉・粘膜などの8項目から口内環境の状況を数値化しアセスメントするツール「OHAT」の学習に取り組んだ。
「以前は人手不足などによる業務の忙しさ故に、職員からは取り組みに対する反発もありました。しかし、OHATを学んでお口の状態を数値で可視化できるようになったことは業務の効率化にもつながったのです。入居者一人ひとりに必要なケアが明確になり、職員の負担も軽減しました」
19年度では14件だった誤嚥性肺炎による入院件数が、昨年度はたったの1件まで減少した。体調を崩す入居者が減ったことから、入居者全体の入院件数も33件から13件へと大きく減り、稼働率も向上。職員全体でスキルの個人差を無くし、個別性の高いケアを継続したことが成功の鍵となった。
入居者への影響を尋ねると「唇や口内が潤い、食事を飲み込みやすくなったという方が増えました。口の開きやすさが改善したことからおしゃべりも活発になり、施設内に笑顔が増えましたね」とほほえむ原田さん。今後は、入居者・施設・職員にとって三方良しの取り組みとして「口腔ケアの重要性を全国に呼び掛けたい」と意気込みを語った。
原田さん
マッサージで唾液の分泌を促進
セミナーの様子。職員の95%が初球をクリアした

