- 2025/12/24
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都介護支援専門員研究協議会 相田里香理事長に聞く
厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会の審議報告案が15日に示され、ケアマネジャーの更新制の廃止が明記された。ケアマネジャーにとって資格更新のための研修受講は費用・時間ともに負担が重く、辞める理由になっていた。今回の更新制・研修に関する見直しについて、「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」の構成員を務める東京都介護支援専門員研究協議会(以下、CMAT)理事長で杉並区ケアマネジャー協議会会長の相田里香氏に意見を聞いた。
――更新制廃止後も研修受講は求められる方向性だ。
「厚労省の『ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会』中間整理でも、ケアマネジャーがケアマネジメント業務に注力することができるよう負担を軽減し、なり手を確保していくことが喫緊の課題とされている。更新制の廃止はこの考えに沿ったもので賛成だ。
一方、自らの知識や技術の更新については分けて考えるべきだ。
私たちケアマネジャーは、変わる制度や医療連携の仕組みなどを活用して利用者を支援している。当然アップデートしなければならない。個々で学ぶのは大変なので体系化し、自己負担なく、学びたい時間に学べるようにする必要がある。
加えて、私は研修は『つながり』を育む場でもあると思っている。少なくとも東京都の主任ケアマネジャー研修は、同じ主任として参画して学びながら、お互いに高めあい、仲間を得る場でもある。主任介護支援専門員更新研修に参加したケアマネジャーは、『時間を割いて来てよかった』という感想をくれる方も多い」
――CMATは東京都の主任ケアマネジャー研修、更新研修、管理者研修を受託している。
「国による昨年度のカリキュラム改正を受けて、都の研修内容も昨年度からバージョンアップした。集合研修とオールリモートのオンライン研修を選択できるようにし、研修前の事前課題はなくした。一方で、演習では『指導者としての主任ケアマネジャーの指導力養成』に重点を置き、ケアマネジャーの持ち込み事例ではなく、脳血管疾患、認知症などの共通事例を手法を用いて検討するようにした」
――受講料の高さや地域差も課題だ。
「杉並区では、都の法定研修受講料の補助事業を活用した上で、残りの負担分は区が負担し、ケアマネジャーの自己負担は実質ゼロになっている。地域団体として仕組みづくりに参画した。
地域のケアマネの課題や要望をキャッチして自治体に届け、仕組みをともに検討し速やかに実現する。それも主任ケアマネジャーの役割の一つだと思う」
――更新制廃止後は時間数は縮減して、分割受講を可能にするなどの案も示されている。
「国が研修のモデルを示すのは重要。その上で、地域課題に応じた科目やスーパービジョン・個別事例等の演習科目は現状通り地域独自で取り組む。また国(座学:必修科目)・地域(演習:選択科目)のように都道府県がそれぞれの実情に応じて柔軟に取り入れられるようにしてほしい」
――更新制を廃止すれば、ケアマネジャーの退職は減るだろうか。
「続けるきっかけの一つにはなる。ただ、ケアマネジャーが辞める理由は、更新制や処遇の問題だけではない。小規模事業所のケアマネジャーは常に『不測の事態が起こったときどうしよう』という不安を抱えている。
杉並区では、コロナ禍をきっかけに、杉並区役所と区医師会、区ケアマネジャー協議会が連携し、緊急時に一定期間他の事業所のケアマネが応援に入る連携体制「杉並モデル」を構築した。
感染症だけでなく、ケアマネジャーが病気や事故、災害に遭った場合に、サービスが継続して提供できるよう支援する。『いざという時にケアマネジャーを支える体制』があるという安心感が、業務や事業所を続けていく原動力になる」
――主任ケアマネジャーの位置づけを法令上明確化する方針も。
「重要だ。ケアマネジャーである自分が主任になるのかならないのか、選ぶ基準にもなる。
私は、事業所の管理者は原則主任ケアマネジャーであってほしいと考えるが、“事情がある場合はその限りではない” という条件付きだ。事業所の存続のためにやむにやまれず主任となった方の中には『本当は管理者になりたくなかった』と言う方も少なくない。
今後は主任ケアマネジャーについても、管理者ルートだけでなく、地域づくりを担う、人材育成に力を入れるなどのキャリアの選択肢を用意すべきではないか。地域における役割、就業する職域、その方向性に沿って、受講科目・受講方法・学ぶタイミングを自身に合わせて選べるようにする。そうすれば、“やむを得ず主任”は少なくなるのではないか」
相田氏

