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介護の「入り口」を日常に ケアマネが地域で無料相談対応 WELLNESS BASE
  • 2026/01/13
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神経難病など重度専門の住宅型有料老人ホームを展開するMC(埼玉県三郷市、嶋淳代表)は昨年12月、三郷駅前のショッピングモール内に、ケアマネジャーが常駐するコミュニティスペース「WELLNESS BASE(ウェルネスベース)」を開設した。地域の人に向け、介護の相談に対面で無料で応じ、介護が必要になる前から気軽に立ち寄れる「地域の介護の入り口」となる拠点を目指している。


埼玉県三郷市。その最東端に位置する三郷駅前には、ショッピングモール「ブランデ三郷」がある。1階にファストフード店、2階にスーパーマーケット、3階には美容院やクリニックなどが入り、ウェルネスベースはその一角に並ぶ。日常の買い物や通院の延長で足を運べる立地だ。

ウェルネスベースは、地域住民からの無料介護相談のほか、ケアに関する書籍の閲覧、事業者同士の交流などを目的に作られている。施設には、MCが運営する居宅介護支援事業所を併設。ケアマネは通常業務の傍らで相談対応を担い、業務過多で疲弊しないよう、担当件数は月20~30件程度に抑えている。

中に入ると、壁一面に並べられた書籍とソファが目に入る。一瞬「図書館かな」と思わせる空間は、介護相談への心理的ハードルを下げるための工夫だ。書籍はケアをテーマに選書され、読書のみの利用も歓迎しているという。さらに進むと相談用カウンターがあり、より込み入った話ができる半個室スペースも設けられている。

対応するのは、すでに介護を受けている人だけではない。「身内に介護が必要になりそう」「何から考えればいいか分からない」といった、介護が始まる前の不安にも応じる。取材時は開設して1週間だったが、すでに地域住民から複数の相談が寄せられていた。

「介護は、必要になってから慌てて考えるものになりがちです。でも、それではその人や家族にとって本当に納得のいく選択ができているのか疑問でした」

そう話すのは、MC代表の嶋淳さんだ。医療機関勤務を経て独立し、現在は2つの住宅型有料老人ホームを拠点に訪問サービスなどを展開する。居宅介護支援事業所もこれまではホーム内にあったが、ウェルネスベース開設を機に移転した。

「介護は特別な出来事ではなく、日常の延長線上にあるもの。普段から顔を合わせられる場所があれば、いざという時にも相談しやすいと思うんです。介護が必要になったときに行くのは地域包括ですが、一般の人には分かりにくい部分もある。ここが、もっと手前の入口になれたらと考えました」(嶋さん)

こうした構想の背景には、20年ほど前に起きた介護疲れが原因で起こった痛ましい事件の記憶もあるという。

「その事件は全国的に報道され、有名になりました。しかし、それから20年近く経った今でも『どこにも相談できなかった』などの理由で、同じような事件が起きている。もし事前に相談が届いていたら、私たちには何ができただろうかということは、ずっと考えています」(嶋さん)

介護についてカジュアルに相談できる空間は、地域にとって貴重な存在だ。一方で、駅前の商業施設内という立地上、当然テナント料はかかる。相談は無料で、ケアマネの担当件数も抑えているため、運営の収支的には厳しいという。それでも、嶋さんは「ウェルネスベース自体は利益を求めない」と話す。

「奉仕の精神という話がしたいわけではありません。会社なので、他で稼ぐ必要はあります。ただ、地域に介護の入口となる場所は不可欠。相談によって情報が集まれば、ケアマネの勉強会もできるし、必要になった人には希望に応じてサービスを案内できる。行政も、情報が集まる場には関わりやすい。ケアマネが地域に出ていく取り組みは、これからますます必要になると思います」

今月からは、定期的に相談会も開催し、今後は福祉のイベントなども行っていく。買い物など日常の延長線上に置かれたこの空間が、地域にとって「介護の入口」となれるか注目が集まる。


嶋淳代表


三郷駅前ショッピングモールの3階の一角に入る


写真中央と右奥が相談スペース。左奥は居宅介護支援事業所だ

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