- 2026/01/21
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人員基準の緩和は事業者存続が狙い 利用者への提供は抑制必至
2027年度からの介護保険制度改正と、介護報酬改定に向け、厚生労働省老健局は昨年12月25日、社会保障審議会介護保険部会(部会長=菊池馨実早稲田大学理事)の「介護保険制度の見直しに関する意見」(以下、『意見』)を公表した。4つの柱のうち、「サービス提供体制の構築」に実は多くのトリックがある――。社会保障審議会の傍聴を20年以上続けている市民福祉情報オフィス・ハスカップの小竹雅子氏に寄稿してもらった。
小竹さん
「給付と負担」は年越し
「地域共生社会と地域包括ケアシステムの深化」を掲げる『意見』は、4項目に分かれる。
Ⅰ 人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築
Ⅱ 地域包括ケアシステムの深化
Ⅲ 介護人材確保と職場環境改善に向けた生産性向上、経営改善支援
Ⅳ 多様なニーズに対応した介護基盤の整備、制度の持続可能性の確保
注目を集めたのは、Ⅳにある「給付と負担」だったが、利用料の倍増、ケアマネジメントの有料化などの議論は、2026年に持ち越された。
だが、私が注目したのは、Ⅰにある「地域の類型を踏まえたサービス提供体制・支援体制」だ。
全国の保険者を三分割
『意見』では、2040年に向け「人口減少・サービス需要の変化」に対応するため、全国を3エリアに分類すると提案した(表1)。ベースになったのは、構成員の半数を事業者が占める「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会(座長=野口晴子早稲田大学政治経済学術院教授)の『とりまとめ』だ。
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標的は「人口減少地域」
検討会は3エリアそれぞれに「サービス体制」を提案したが、肝心の地域分類は漠然としていた。介護保険部会の『意見』では、「中山間・人口減少地域」は、「特別地域加算の対象地域を基本」に、「都道府県・市町村における検討」に委ねるとある。ここに、トリックがある。まず「中山間」とあれば、過疎地だと思う。だが、後半の「人口減少地域」はどこなのか。
『意見』には、「65歳以上人口は市町村の65%(1064市町村)で2025年までにピークを迎える」とあり、26年以降、約7割の市町村の「高齢者人口が減少」するのが前提だ。
しかし、国立社会保障人口問題研究所の『日本の地域別将来推計人口(23年推計)』は、介護適齢期を迎える75歳以上人口が最大となる年は、30年が594市区町村(34・4%)、50年が520市区町村(30・1%)としている。
市町村の約7割が65歳以上人口の「減少地域」でも、同じく約7割の市町村で、75歳以上人口の「サービス需要」は増え続ける。
「中山間・人口減少地域」のサービス体制
では、「中山間・人口減少地域」となった市町村の「サービス体制」はどうなるのか。
『意見』には、特例介護サービス(基準該当居宅サービス、離島等相当サービス)の拡大、「地域支援事業の一類型」が盛り込まれ、具体的な内容は、今年の介護給付費分科会(分科会長=田辺国昭東京大学大学院法学政治学研究科教授)で検討するとされた(表2)。
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「事業者本位」の新類型
特例介護サービスは人員基準を緩和できるが、利用者の“需要”が高い福祉系の在宅サービスばかりが並び、医療系と施設は登場しない。
「人材不足社会」で、事業者が人員基準を満たせない。だから、事業者存続のために基準を緩和する。これは、事業者の“需要”で、利用者の“需要”ではない。スタッフが最低基準以下では、新規利用者に対応できず、サービス提供は抑制される。
特例介護サービスの新類型では、訪問介護事業者に介護報酬の月単位定額制という新たな選択肢が例示された。こちらも、事業者の“選択”で、利用者が選ぶわけではない。
振り返れば、06年度に要支援認定者の訪問介護と通所介護が月単位の定額報酬になったとき、給付は大幅に削減された。15年度以降は給付から外され、地域支援事業に移った。以来、要支援認定者は増加の一途だが、事業の利用者は、訪問型サービスは減少、通所型サービスは横ばい状態だ。
給付と変わらない」地域支援事業
また、『意見』は「地域支援事業の一類型」として、訪問介護、通所介護、短期入所生活介護を給付から外し、市町村事業にしてもいいという。仕組みも財源も給付と変わらないのなら、なぜ、わざわざ新類型を作るのか。
注意すべきは、要支援1から要介護5まで、すべての認定者が対象になることだ。
介護保険部会は、「給付と負担」で、要介護1・2の訪問介護と通所介護の地域支援事業への移行を保留した。だが、約7割の市町村が該当する「人口減少地域」に暮らす認定者は、訪問介護と通所介護、短期入所生活介護を給付カットされる可能性がある。
事業への移行は「任意」
もう一つ、重要なのは、これらの見直しは、市町村の任意で始まることだ。
20年前、要支援認定者の訪問介護と通所介護を地域支援事業に移すときも、最初は任意事業で実施する市町村はごくわずかだった。しかし、15年度以降、すべての市町村が実施することになった。約10年かけて、給付カットを完了させた前例をみれば、「地域支援事業の一類型」もいずれ、全面実施につながるかもしれない。
介護が必要な本人や介護家族には難解な抑制策だが、在宅介護の“需要”を支えるサービスを抑制しておいて、第1号介護保険料や利用料など負担増を求めるのは、図々しくないか。

