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「7つのゼロ」貫き尊厳保持と生産性向上を両立 総合ケアセンター駒場苑
  • 2026/01/27
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目黒区の総合ケアセンター駒場苑(社会福祉法人愛隣会)が運営する特別養護老人ホームは、機械浴や入居者の拘束などをゼロにするケア方針「7つのゼロ」を掲げている。施設長・坂野悠己さんは「入居者の尊厳保持を徹底する方針を貫いたことが、自立支援と職員の負担軽減に結びついた」と話す。

「7つのゼロ」とは、①機械浴ゼロ②拘束ゼロ③おむつゼロ④誤嚥性肺炎ゼロ⑤下剤ゼロ⑥脱水ゼロ⑦寝かせきりゼロのこと。入居者が自宅にいた頃の当たり前の生活を尊重し、その人らしい暮らしを最期まで支えるケアだ。1989年の創業当時から、入浴介助では自分の力で立てる人に対してリフト機器を、排泄介助ではトイレで排泄できる人におむつを使用するなど、入居者の尊厳の保持を怠るケアを続けていた駒場苑。改革を目指していた前任の施設長の相談を受けて、15年前に他の施設から転職して主任になった坂野さんが始めた取り組みだ。

 「入居者さんは57人で、要介護度は4程度と比較的重めです。パーキンソン病などの指定難病を抱える人もいますが、入浴ではヒノキの木で作られた浴槽でゆっくりとお湯に浸かってもらい、一人ひとりのペースに合わせた個浴を行っています」と坂野さん。リフト浴を廃止にして浴場を改装後、フロア数に合わせて浴槽は3台設置された。職員の負担はどう変化したのだろうか。

「以前は、1つしかないリフトを交代で使っていたのでかなり時間がかかってしまい、職員の体力も消費されていました。現在は、浴槽の横に同じ高さのシャワーチェアを置いてお尻を滑らせるようにお湯に浸かってもらうことで、浴槽への出入りの介助もスムーズに進んでいます。一日に入浴する人数も約10人から6人に減らし、入浴時間に余裕を作れるようになりました」。お風呂でゆったりと過ごすひとときが習慣化したことで、入居者からの入浴拒否も少なくなったという。

施設で導入が進められている見守り機器は、駒場苑では転倒リスクが大きい一部の人のみの利用にとどめている。

「入居契約時の段階で『見守りカメラやセンサーで生活を管理せず自由を尊重する』という方針をご家族さんに説明することを心掛けています。一定のリスクに対する理解を得ることで、職員も気負わずに働くことができますしね。もちろん見守りは徹底していますが、どのフロアもこぢんまりとした広さなので業務負担は最小限で済んでいます」

20歳の頃、機械浴や拘束が当たり前の時代に介護の世界に入った坂野さん。当時から「介護施設を人間らしく最期を迎えられる場所に変えたい」と力強く願い、改革に努めてきた。「入居者さんに自分の力でお風呂に入ってもらいたい――その思いが若さゆえに先走ってしまい、別の特養では機械浴の装置を壊してしまったこともあった」というので驚く。テクノロジーは今や必要不可欠であることは確か。だが、それは効率化のためではなく、自分たちが目指すやりたい介護のために活用するものだろう。皆さんもぜひ、やりたい介護を描いてほしい。


坂野さん


ヒノキの香りに包まれた浴場

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