- 2026/02/03
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【やさしさ、ぐるぐる。福祉と環境、いい関係。】エナジア提案のZEBでBCPを〝使いきる〟
非常時への備えであるがために日常的に効果が見えにくく、投資が報われないようにも感じられてしまう事業継続計画(BCP)に基づく対策。その重要性を知りながら、まだ災害が起きていない地域の企業は時に徒労感に苛まれる。福島県の再生可能エネルギー会社・エナジアはそこで、施設の建築主に省エネ・再エネ技術を駆使した防災対策を提案し、平時の経営効率化と非常時の事業継続を「フェーズフリー(切れ目なし)」に両立させる建物を広めている。(環境新聞企画部・長谷川潤)
エナジアが提案する省エネ・再エネの施設は、日常の光熱費を抑えつつ発災時にはエネルギー利用を自立させる防災拠点として機能し、利用者と職員を守る。「エネルギー需要と被災の影響が最も大きい介護施設こそ効果がある」(佐藤篤取締役営業部長)と述べるなど、BCPを〝使いきる〟物件だ。
同社は福島ミドリ安全の代表も務める白石昇央社長が東日本大震災の被災をきっかけに立ち上げた。顧客の省エネ建築のプランニング・コンサルティングや、再エネ利用を支援する事業と、その関連サービスについて、国や各地の補助金を組み合わせて省エネ建築を提案している。年間のエネルギー利用と再エネ創出の差し引きを実質ゼロにする建築物「ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング(ZEB、ゼブ)」を展開しており、近年の地球温暖化対策でエネルギー利用を高度化させた建築を求める声が強まるなか、活躍の場を国内各地に広げている。
政府はZEBの普及を進めている。2025年4月には住宅を含む全ての建築物で比較的取り組みやすい条件の省エネ基準を義務化したほか、30年までに床面積300平方m以上の中規模・大規模建築にZEBを義務化するロードマップを示している。新規に施設を建設する場合、省エネ・ZEB基準の適合が求められ、段階的に条件が厳しくなる流れ。さらに、介護業界は24年に施行されたBCPの策定義務化も重なっている。持続可能な施設の運営にはいずれの動向についても後ろ向きではいられず、省エネ・再エネと防災を効果的に組み合わせた事業の再構築が避けられない。
エナジアは省エネ・再エネと防災を両立させるため「再エネ防災(レジリエンス)」という新たな解決策を示す。従来の非常時にしか使えない防災設備という枠組みを打破し、ZEBをはじめ施設の周辺に埋もれている地中熱や太陽光といった再エネ、燃料電池車(FCEV)・電気自動車(EV)の蓄電性能・給電性能を活用した「移動体電力」と、未利用熱ヒートポンプなど、使えるツールを徹底的に使い、フェーズフリーのBCPを描き出す。震災で全県の電力供給が途絶し、福島ミドリ安全の客先も含めた全産業が停止した実態を目の当たりにした彼らだからこそのこだわりだ。
ZEBで建物の断熱性能を向上させ、効率のよい空調を導入するなどでエネルギー消費を大幅に削減する。さらに太陽光発電などでエネルギーをつくりだすことでエネルギー消費量の収支をゼロにする。
24時間365日稼働し、エネルギー消費が激しい介護施設でこそ平常時の電気代を削減し、経営基盤を強める。
移動体電力を使ったV2X(Vehicle to Everything=車両とモノの連携)も一つの柱。EVや水素自動車(FCV)を「動く蓄電池」「動く発電機」として活用する仕組み。平常時には自動車として使うのはもちろん、非常時には施設の電源として使う。停電が長期化しても外部から電力を積んで駆けつけることもできる。
同社の再エネ防災は、施設が被災時に被る影響の大きさから逆算して提案する。入居者の命に関わる熱源やエレベーター、トイレなどの給水ポンプ、被災時の重要な照明など、あらかじめ指定した「特定負荷」へ確実に電力を供給するよう設計する。県内の社会福祉法人が郡山市に新設した特別養護老人ホームで省エネと創エネによりエネルギー消費を75%以上削減する「ニアリーZEB」を達成した。特養では日本初の事例となるなど、複数の実績を上げる。
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エナジアが手掛けた福島ミドリ安全福島支店の新社屋。
プランニングの見本となるよう、高度な断熱性能のほか、窓ガラス一体型の太陽光発電や蓄電池、注目のV2X といったさまざまなZEB化のツールを盛り込んでいる
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エナジアが手掛けた社会福祉法人すみれ福祉会

