- 2026/03/27
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特養ホーム博水の郷 コストと質の両立模索
今年は2027年度介護報酬改定に向けた議論の年だ。各サービスごとの課題を通して報酬改定の方向性を考えていく。1回目は、特別養護老人ホームの食費。食材費やコメ代、人件費の高騰を踏まえ、今年8月の臨時改定では、食費の基準費用額を100円引き上げ、1545円とする予定だ。だが、それでは「焼け石に水」と言わざるを得ない。現場は次期報酬改定で、基準費用額と、基本報酬のさらなる引き上げを求めている。
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東京都世田谷区にある特別養護老人ホーム博水の郷(入所90床、ショートステイ18床)は、一昨年、入居者の1日の食費を1850円から2千円に引き上げた。背景には、食材費や人件費の高騰がある。
同施設は2002年の開設以降、給食業務を同じ業者に委託してきた。メニューは施設の管理栄養士が作成。行事食や健康に配慮した特別食のほか、「食事委員会」の企画による、ケーキバイキングやセレクトメニューの日など、入居者の楽しみである「食」を充実させている。職員向けの昼食でも、有名店のとんかつや、からあげの取り放題などを提供し好評を得ていた。
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そこに押し寄せてきたのが物価高の波だ。コメの価格急騰の際には、「コメだけは国産を」とこだわった。だが、その後も物価高騰が続き、昨年は、業者からの委託費引き上げ要請を受けて、月30万円引き上げた。「それでも食材費分だけ。実際には最低賃金の上昇で人件費も上がっています」と田中美佐施設長は切実な表情を見せる。
入居者90人のうち2千円の食費を全額支払う利用者負担第4段階以上は現在58人。第3段階以下の32人は、国が定める基準費用額1445円と、負担限度額との差額は介護保険から給付されるが(補足給付)、基準額と実際の食費(2千円)との差額は施設の負担となる。単純計算で毎日約2万円の赤字になるという。
これまでもさまざまな工夫をしてきた。より安い食材を仕入れるのは当然、朝食は毎日白米だったのを、白米とパンを1日置きに変更。法人が運営する他の特養では、朝食と夕食を完全調理済み食材(完調品)に変更し、経費や手間を抑えている。
委託費増を受けた対応について田中施設長は、きめ細かい努力を継続するとともに、入院者を減らして稼働を安定させるなど運営面でカバーする方針と話す。「食費を切り詰めて、利用者の楽しみを奪うことは避けたいと考えています」。
全国老人福祉施設協議会(老施協、大山知子会長)の調査によると、昨年6月時点の入所者1人1日当たりの食費は平均1787・6円で、食費の基準費用額を342・6円上回っていた(表)。今後食材費がさらに高騰した際に質を維持する余地があるかの問いには、77・1%が「余地がない」と回答し、前年より8・4ポイント上昇していた。
老施協は、このデータを持って昨秋、厚労相と財務相に基準費用額の引き上げを陳情。26年度介護報酬の2・03%プラス改定で、介護職員の処遇改善加算引き上げと、介護保険施設での食費の基準費用額の100円引き上げ(今年8月から)につなげた。(以下略)

