- 2026/04/21
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間接業務の切り出しでケアの質の向上に
介護の現場でのスポットワークの活用は、人員補てんや長期雇用だけではない。介護付き有料老人ホームのニチイホーム下丸子(株式会社ニチイケアパレス)では、清掃業務を中心にスポットワーク「タイミー」を導入。介護職員は介護の業務に専念できる体制を作り出し、業務の効率化とサービスの質向上につなげている。一方、ワーカーの質のばらつきといった課題も指摘している。
ニチイホーム下丸子は62室を有する介護付き有料老人ホーム。現在の利用者数は55人で、介護職員は19人。同施設の介護職員は清掃やリネン交換などの間接業務も担っていたが、入居者や家族からは清掃の不備を指摘する声が寄せられていた。背景には、介護職員が居室清掃や共用部の管理に時間を割かれ、本来のケア業務に十分な人手を充てられない状況があった。清掃などの間接業務は、パート職員の「ふれあいケアスタッフ」が中心に行っていたものの、人員や作業効率の面で十分に行き届かず、介護職員も間接業務を担うという課題も抱えていた。
そこで同ホームは、既存の体制を補完する形でスポットワーカーを採用。午前10時から午後3時の時間帯に受け入れ、週3~4回の清掃を担ってもらう体制を構築した。ふれあいケアスタッフと役割分担することで、居室清掃の回数と質を安定させた。
ワーカーは、主に近隣の主婦層などが担い手となっており、掃除経験を生かせる人材が多いという。有資格者の募集ではないため、募集をかけると短時間で埋まることも多く、人材確保の面でも一定の効果が出ている。リピーターとして継続的に勤務する人材もおり、現場の業務手順を理解したうえで作業に当たることで、作業の安定にもつながっている。
「導入後は、面会に来た入居者家族から『以前よりきれいになった』などと言っていただける機会が増え、改善効果があったと思います」(髙橋太吾ホーム長)
最大の利点は、介護職員の負担軽減だ。間接業務を外部人材に委ねることで、職員は食事介助や見守りなど直接ケアに集中できるように。髙橋ホーム長は「限られた人員のなか、介護職員がいかにケアに専念できるかが重要。業務の切り分けによって運営の安定性も高まった」と話す。実際、数年前に退職などで職員数が減少したときでも、業務体制を大きく崩すことなく対応できた。
一方で、スポットワーク特有の課題もある。いわゆる「単発バイト」として応募ができてしまうため、働きに来る人が日替わりで異なるといった可能性もあるからだ。また、ワーカーの経験や技能には差があり、作業の質にばらつきが生じる可能性があるほか、初回受け入れ時の説明や指導に一定の時間を要する。特に学生や高齢者など不慣れな人材が来る場合は、職員が付き添うなど柔軟な対応が必要になることもしばしば。実際、受け入れ初期には、業務に入る前の説明や同意書の記入などに時間を要し、実際の作業時間が圧迫されるケースもあったという。現場では、ワーカーごとに理解度や作業スピードを見極めながら、付き添いの度合いを調整するなどの対応を行っている。
また、入居者側も当初は「見慣れない人が部屋に入る」ことへの警戒感を示すケースがあった。これに対し同ホームでは、清掃など資格を要しない間接業務に限定することで役割を明確化している。当初、利用者からは、見慣れない人材への警戒感もみられたが、継続的な受け入れのなかで徐々に解消された。加えて、リピーターが多く入っていることや、初めてのワーカーでは既存の職員と一緒に清掃を行うなどにより、「現在は利用者からスポットワークを活用していることによる不安の声は出ていない」(髙橋ホーム長)と話す。
未経験者の参入資格の関心喚起にも
こうした取り組みは、働き手側にも新たな入り口を開いている。ニチイホーム下丸子で清掃業務に従事する女性は、スポットワークサービス「タイミー」を通じて同ホームで働くようになった一人だ。もともと介護の仕事に関心があったわけではないというが、母親の施設入居をきっかけに「施設の中を知りたい」と考え、2025年の秋頃からニチイホーム下丸子で継続的に勤務している。
業務は利用者の居室清掃が中心で、勤務はこれまでに7回程度。「介護職員や、パートのふれあいケアスタッフが丁寧に教えてくれるので、安心して働ける」と話す。
スポットワークサービスならではの利点として、空き時間を活用できる点も魅力だといい、「タイミングが合えば、ぜひ今後も続けたい」と意欲を見せる。
現場でのやりがいについては、「入居者に顔を覚えてもらえたり、会話ができたりしたときは嬉しい」と語る。介護業界には「きつい仕事」とのイメージもあるが、資格がなくても関われることに満足していると話し、将来的には介護の資格を取得することにも関心を示しているという。
スポットワークは即戦力の確保にとどまらず、未経験者が現場に触れ、関心を高める契機ともなりえる。人材確保が課題となるなか、こうした入り口の広がりが、将来的な担い手の裾野拡大につながる可能性も感じられた。
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髙橋ホーム長
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ニチイホーム下丸子は、東急多摩川線・武蔵新田駅から10分ほど歩いた場所にある
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スポットワークサービス「タイミー」を活用し、パートスタッフと一緒に居室の清掃を行う

