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次期報酬改定の課題 一人ひとりの“生きたい”毎日を支える NPO法人グレースケア機構
  • 2026/04/24
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介護保険にとらわれないトータルケア

訪問介護や訪問看護、地域密着型デイサービスなどの在宅サービスを中心に、子どもから高齢者、障害者など幅広い対象者に向けた事業を手掛けているNPO法人グレースケア機構(東京都三鷹市)。2024年度介護報酬改定で訪問介護の基本報酬が引き下げられたことで介護保険事業収支は一時マイナスになったものの、制度の枠にとらわれない事業運営で乗り切った。代表理事の柳本文貴さんは、利用者一人ひとりの日々の生活を支えられる介護報酬にすべきと訴えている。

2008年に創業した同社は、三鷹市を含めて都内3カ所に訪問介護事業所を構えている。利用者は介護保険・障害者福祉・自費サービス、地域生活支援事業などを含めて合計で約760人。年齢層は0歳~100歳代までと幅広く、高齢者については平均要介護度2・6と自立度は高い傾向にある一方で、要介護度4~5の人も2割を超える。法人内に研修機関があることから、職員247人のうち、特定の対象者に喀痰吸引を行うことができる喀痰吸引等研修3号を取得している職員は120人にも上る。

市内に医療的ケアを提供している介護事業所は少なく、その分、利用者からのニーズは大きいという。

介護業界では経営難や人材不足を背景に、短時間で単価の高い身体介護の提供に注力し、効率的に件数を稼ぐ在宅介護事業者も少なくない。また、介護保険の給付が抑制される中で、事業者は“できない”と断ることが仕事のようになってしまい、結果として利用者が自宅での生活を諦めてしまうケースもある。しかし、グレースケアでは利用者の気ままな在宅生活を支えるために、必要であれば、単価の低い生活援助やリスクを伴う医療的ケアにも対応する。

「施設で家賃分も含めた高額な費用を払うよりも、住み慣れた家で自費と制度のサービスを組み合わせたほうが安いし、その人らしい人生の継続につながります」と訪問問介護事業所のトータルケアコーディネーターを務める加守田久美さんは力強く話す。例えば、一人暮らしの高齢者の話を傾聴することは、介護報酬では評価されていない。自費サービスとして組み込めば、生活の中で人とのつながりを持ち、彩りのある毎日へと結びつく。そのほか、急な通院の付き添いや同居家族の食事作り、ペットの世話、旅行や観劇などの外出も支援している。

「たとえ体が衰えたり、障害を負ったりしても毎日を楽しく過ごしたい。誰もが願う当たり前の生活を叶えるためには欠かせないサポートです」(加守田さん)

一方、働く介護職にとっても認知症や精神障害に対するケアから家族対応まで、あらゆるスキルが身につくのがグレースケアならではの強みだ。

「先日、亡くなられた利用者さんの看取りケアでは、ベテラン職員と共に20代の若手職員にも担当してもらいました。まだ経験や知識が浅い職員もいるので、先輩職員の同行や細やかな指導を重ねて積極的に実践を積んでもらい、職員全体の技術を底上げすることを心掛けています」(加守田さん)

24年度報酬改定で介護保険事業はマイナス

「制度より生活」を重視したケアを提供してきたグレースケアの訪問介護にとっても厳しかったのが、2024年度の介護報酬改定だ。(以下略)

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