- 2026/05/19
- バックナンバー
- 最新ニュース
特集 ケアマネの質を上げる!
ケアマネジャーの質の向上や教育のあり方が、介護現場で改めて問われている。高齢化の進展に伴い、利用者像やニーズが複雑化する一方、ケアマネジャー不足や業務負担の増大も深刻化している。こうしたなか、奈良県で自主的な学びの場を継続しているのが、主任介護支援専門員の東川信一さんが代表を務める「ならケアマネ支援ネット」だ。2017年にケアマネジャー有志による勉強会として始まり、現在は「未来あるケアマネジャーを目指して」をコンセプトに、事例検討やICT活用などをテーマに活動している。
ならケアマネ支援ネットを立ち上げたきっかけは、東川さんが主任介護支援専門員研修を受講していた際に、兵庫県朝来市の「気づきの事例検討会」の実践に触れたことだった。主任ケアマネが地域のケアマネを支え、地域全体の支援力向上につなげるという考え方に強い影響を受け、「奈良でも継続的に学べる場を作りたい」と考えたという。当初は主任ケアマネを中心に理論や事例検討を行っていたが、その後は経験の浅いケアマネにも対象を広げ、障害福祉やリハビリなど多職種分野も含めた勉強会へ発展していった。
2019年には、アローチャート研修会を奈良県で初めて開催。県外からも参加者が集まり、約60人の規模に。福井県や滋賀県、京都などからも関係者が訪れ、活動への関心が高まったという。東川さんは「地域を越えて学びたいというニーズがあった」と振り返る。現在も、県外からオンラインで参加するケアマネジャーがいるなど、学びや交流の場としての役割を担っている。
さらに、アローチャートを活用した支援の整理や、ICT・生成AIの活用などにも力を入れている。特に2024年以降は、ケアプランデータ連携システムや介護情報基盤を見据え、「ICTは必修」と位置づけた勉強会を本格化させた。オンライン形式を中心に、毎月勉強会を継続している。
講座では、単なるICT機器の操作説明だけでなく、実務でどう活用するかを重視している。
「ICT機器の活用は効率化して終わりではありません。それによって空いた時間を利用者への支援に割くなど、ケアマネジメントに時間を使えることが大切です」
実際、講座参加者の中には、最初はPCのログイン操作にも苦労していたものの、継続参加を通じて使いこなせるようになり、他の参加者に教える側になった人もいるという。
一方、現場では依然としてICTへの抵抗感も根強い。特に高齢のケアマネでは、できるだけ新しいことを覚えたくないという声や、情報漏えいへの不安も少なくない。東川さんは「正しく恐れることが大事」としたうえで、「危険性だけでなく、どう使えば安全なのかを知る必要がある」と話す。
また、行政や地域包括支援センター側に紙文化が残っていることも、デジタル化が進みにくい要因だと指摘する。
ケアマネ教育の必要性については、「知識が不足すると、適切な支援やプランニングができなくなる」と強調する。法定研修や単発の研修だけでは十分ではなく、継続的に事例を共有し、自分の担当ケースに引き寄せながら考える場が重要だという。実際、ならケアマネ支援ネットの勉強会では、他地域の支援方法やローカルルール、多職種との連携方法など、日常業務だけでは得にくい情報交換も行われている。
また、学びの場を設置している背景には知識を得るだけでなく、ケアマネジャー同士のつながりを作る意味もあるという。例えば、勉強会のほか月2回程度実施している「ゆるっとカフェ」では、録画をせず、自由に悩みや課題を話し合える場を設けている。そこから新たな勉強会の企画が生まれることもあり、「一人で抱え込まず相談できる関係づくりも、質の向上には必要」と話す。
ならケアマネ支援ネットとして活動を続けるなかでの課題は、運営を担う人材の確保だ。東川さん自身が企画や講師調整などを担う場面も多く、負担は大きいという。それでも、地域全体でケアマネの質向上に向けて、一人でも取り残したくないという考えから、現地でのサポートや初心者向け講座も継続している。
東川さんは「これからはケアマネの人数が減る中でも、一人ひとりの質をどう高めていくかが重要になる」と話す。ICT活用による効率化が進んでも、最終的に必要なのは利用者に寄り添い、多職種と連携しながら支援を組み立てる力だと強調。「ケアマネが学び続けることで、ケアマネ自身が仕事のやりがいや面白さを感じられる環境を作りたい」。人材不足が深刻化するなか、現場発の自主的な学びの取り組みは、地域のケアマネを支える一つのモデルとなっている。
![]()
東川信一代表
![]()
リアル開催の勉強会では最大60人集まったことも
![]()
様々な団体と連携してICT勉強会も行っている
![]()
勉強会や「ゆるっとカフェ」で交流も

