タイトル

新国家資格誕生でどうなる? 生活援助 日本ホームヘルパー協会会長 松下みゆき氏 人材確保とニーズ対応の選択肢拡大に期待
  • 2026/06/09
  • バックナンバー
  • 最新ニュース

報酬格差、重度化予防の質担保が課題に

介護や看護による離職を減らすため、政府は家事支援サービスの国家資格を創設する方針を固めた。技能検定の一種として家政婦紹介事業所の団体が行っている家政士検定試験をベースに資格取得の枠組みを構築していく考えだ。日本ホームヘルパー協会の松下みゆき会長は、深刻化している介護人材の確保や利用者の多様な生活支援ニーズに対応する選択肢の拡大に期待する一方、重度化を予防するという生活援助の専門性や質を担保できるか、研修内容や報酬上の評価に懸念を抱いていると話す。(編集部)

――厚生労働省は現在のところ、新資格は介護保険の生活援助とは別だと説明している。

「訪問介護事業所は休止・閉鎖が相次いでいて、最大の要因はヘルパー不足です。また、運営の効率化のため、単価の高い身体介護に特化する事業所も増えている上、介護予防・日常生活支援総合事業での生活援助従事者不足やサービス提供事業所の確保にも課題を抱えています。こうした現状を踏まえると、介護保険との関連性・整合性については早晩、課題となってくると想定します。

その上で、メリットもデメリットもあると思います。メリットとしては、第一に介護人材を確保する裾野が広がることへの期待です。特に、サービス提供体制がぜい弱化している地方や中山間地の高齢化地域で効果を発揮する可能性が高いのではないかと思います。

2つ目のメリットは、初任者研修の修了者や介護福祉士資格を持ったヘルパーが身体介護や医療的ケアのニーズの高い中重度者への支援に集中できるようになり、役割分担が進んで業務負担が軽減されることへの期待です。さらに、新資格を得た人たちから初任者研修を受けようという人が増えてほしいですね。

ただ、新たな検定試験を受ける人がどれくらいいるかは未知数です。私は地元の鹿児島市で訪問介護事業所を運営していますが、もともとは家政婦紹介事業所から出発していて、現在も2つの事業を両輪で提供しています。同じような訪問介護事業所は割と少なくないと思います。ですが、日本看護家政紹介事業協会が実施している家政士検定を受けている家政婦は、全国的にも非常に少ないのです。弊社の事業所に登録している家政婦は1千人いますが、5人ほどしかいません。

ひと言でいえば家政士を取るメリットがないからです。家政婦は無資格でも自己流でもいい。求人先の雇用主の意向に沿って仕事をするのが一番重要ですし、やはりもともと賃金が高いので、新たに勉強して検定に挑戦するインセンティブが沸きにくいのですね。

ですが、私としては新国家資格が今の家政士検定をベースにして構築されるのであれば、家政婦さんたちにとっては大きなスキルアップになりますし、長い目で見て自分の職業を守る、生活の安定につながると思っています。なので、今年秋に予定されている家政士試験を受けておくことを勧めていきたいと考えています」

――介護保険のヘルパーが行う生活援助と混乱も生じそうだが。

「今は、懸念材料のほうが多いというのが正直なところです。とりわけ生活援助サービスの質を担保していくことができるかという点です。

団体検定以上の、国家資格に相当する技能検定となることは、家事支援の質が標準化され、向上するという意味では喜ばしいことですが、家事支援が単なる家事代行という認識の枠組みのなかでその専門性が構築されてしまわないだろうか、と危惧しています。

家事支援を含む、生活援助サービスとは、転倒など重度化につながる生活環境のリスクや、本人の異変に早期に気づいて重度化を予防する役割があります。それはとても高い専門性なのです。高齢者特有のリスク、認知症の理解、服薬管理などの知識や対応力をきちんと習得することが重要だと思います。そうでないと、初任者研修以上の介護職や介護予防生活援助従事者との情報共有や連携が難しくなり、トラブルも起きやすくなってしまうのではないでしょうか。サービス提供責任者の負担増にもなりかねません。

そして新資格者に対する報酬上の評価、賃金設定がどうなるかも課題です。賃金を決めるのは事業者ですが、初任者研修修了者、生活援助従事者研修修了者、介護福祉士などとのバランスを考慮しながら、働く人たちが納得できる賃金設定をしなければ、やはり新たな担い手の確保も今働いている人の定着も難しくなる可能性があります。

私は事業者、経営者の責任がますます重要になると思います。生活援助は誰にでもできる仕事ではない、重度化を予防しQOLに直結する重要な領域にかかわる専門性の高い仕事であるという認識を持ち、チームとして利用者さんにかかわる体制づくり、教育に力を注いでいくことです。

制度はどんどん、介護を分業化していく方向に進んでいこうとしているのかもしれませんが、人の人生は健康なうちから要介護になっても切り離せるものではありません。さまざまな職種がつながって、シームレスに利用者さんを支え続けていけるよう、国に対しても生活援助の重要性を理解してほしいと強く思います」

ページトップへ