- 2026/06/23
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縫製で社会参加 アップサイクル事業も
「長生きして申し訳ない」。介護事業を運営する中で、高齢者からそんな言葉を聞くことがあった。岐阜県のNPO法人ひだまり創(古澤由加里理事長)は、高齢者の技術や経験と、地域の困りごとを結びつける取り組み「チームおーばー80」を展開している。編み物や縫製などを通じて地域とつながる活動で、ホテルや病院、介護施設などとも連携し、地元産業の活性化と高齢者の生きがいづくりを実現している。
ひだまり創は、岐阜市にあるNPO法人。「生きるをささえる事業」として居宅介護支援事業所を中心に、訪問介護やデイサービスなど在宅サービスを運営する。そして、もう一つ「生きるをつくる事業」として、高齢者の技術や経験と、地域の困りごとをマッチングする事業「チームおーばー80」などを展開している。
チームおーばー80は、要介護の有無にかかわらず「地域のために何かしたい」という高齢者が登録。企業や近隣の介護事業所とも連携し、介護施設や自宅、市役所や地域包括支援センターなどの通いの場で作業を行う。繊維の街である岐阜市の特性を生かし、資材を譲り受け、ケアマフやおしゃれ雑巾などを製作している。
活動の原点となったのは、理事長の古澤さんが介護現場で感じたある違和感だった。
介護保険制度は、利用者のできないことを支援しつつ、自立に向け生活を再構築するための仕組みだ。しかし、その中で古澤さんは「支えられる側」に負担を感じる高齢者が少なくないことに気付いたという。
「利用者から『ごめんね。長生きして申し訳ない』と言われたんです。〝支援される〟ということに負担を感じている人も少なくない。もう少し
支援する側の活動が必要なのではないかと思ったんです」
この活動の特徴は、介護が必要になっても参加できる点だ。
一般的な地域活動は、会場へ出向くことが前提となる。しかし、車いす利用者や認知症の人、外出が難しい人にとっては参加のハードルが高い。
そこで、チームおーばー80では、一つの作品を完成させるまでの工程を細分化し、参加者の状態に応じて役割を切り出した。「これだけならできる」という役割を見つけることで、フレイル状態の高齢者から要介護4程度の人まで参加できる仕組みを整えた。
自宅で作業する利用者の作品は、ひだまり創のスタッフが受け取りに行く。人件費は販売部門の売り上げなどから充てているという。
廃材をアップサイクル 参加者には工賃も
この活動の中から生まれたのが、今年4月に立ち上げたブランド「iquilt(イキルト)」だ。イキルトは、チームおーばー80の販売部門として位置付けられ、平均年齢80歳の元縫製職人が参加している。
地元企業から出る廃棄繊維を活用し、バッグやポーチなどへと生まれ変わらせる。参加者には作業量に応じた工賃も支払われる。
「認知症が進んでいても、長年培った技術は体が覚えている。90代の方でも、仕事で使っていたミシンの使い方は忘れていません」
活動を通じて、利用者に変化も見られるようになった。
「長生きして申し訳ない」のようにネガティブに考えていた利用者が、「できることなら何でもやらせてもらいます」と話すように。好きなことや得意なことで社会に貢献できると喜びの声は大きい。
そして、この活動は高齢者の生きがいづくりだけにとどまらない。社会福祉協議会や地域包括などとも連携し、閉じこもりがちな高齢者へ働きかけるアウトリーチの役割も担っている。介護保険サービスの利用につながっていない高齢者と接点を持ち、必要に応じて支援へ結び付ける。
「介護認定を受けてから初めて出会うのではなく、フレイルの段階から関われる。介護事業所にとっても新しい地域との接点になると思います」
現在は、他法人への導入支援にも力を入れている。作業工程の設計や職員研修、地域とのマッチング方法などを伝えながら、全国各地で同様の取り組みを広げていきたい考えだ。
古澤さんは「最初は人件費や材料集めなど課題もあったが、一つ一つ仕組みを作りながら解決してきた。全国でも同様の取り組みが広がってくれたら嬉しい」と話す。
高齢者が増えるなか、高齢者はどうしても「支援の対象」として見られることが多い。しかし、その経験や技術は地域や社会にとって大切な資源でもあり、本来は支え合う関係である。チームおーばー80は、高齢者の社会参加を支えるだけでなく、地域との新たな関係づくりにもつながっている。
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古澤理事長
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施設や自宅、通いの場などで作業を行う。今年4月からは販売部門「iquilt」も
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イキルトではバッグやポーチも制作する

