- 2026/07/21
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利用者中心のケア提供を丁寧に指導
千葉県市川市などで訪問介護やデイサービス、居宅介護支援事業などの在宅サービスを提供する愛ネット(境野みね子代表)は、昨春、特定技能制度を活用した外国人介護人材の受け入れを開始した。中小事業者にとって人的・経済的負担は少なくないが、将来の在宅介護人材を育てるには、在宅事業所で、施設とは違う利用者中心のサービス提供を学んでもらうことが重要と考え、訪問介護での育成に力を入れる。
「大変なことないです。みんな“おかげ様”です」
日本語で流暢に話すのは、愛ネットの訪問介護事業所で働く、ミャンマー出身のヨン・リン・ピェさんだ。
20歳になったばかり。介護分野の特定技能外国人として1年半前に来日。入社して最初の1年間は同社のデイサービスで働きながら介護業務を身に着けた。今は、訪問介護事業所でサービス提供責任者や先輩職員が同行して週2~3回訪問介護を提供、他の日はデイで勤務している。
「私たちが想定していたよりもずっと早く業務を覚えてくれました。とても優秀です」
会社の人事担当で、受け入れた2人のミャンマー人の生活面の支援を引き受けている佐々木ゆうこ専務取締役は、成長ぶりに目を細める。
愛ネットは、政府が外国人介護人材による訪問介護の提供を「解禁」するのを見越して受け入れ準備を進めてきた。
同社では幸い必要な人材は確保できていた。ヘルパーは20代から70代までがいるが、70代にもなると身体介護の提供が負担にもなる。障害福祉サービスの居宅介護も提供しているため、体力のある若い人材も必要になると、目を向けたのが外国人介護人材だ。
佐々木さんは会社の将来を考えた時、外国人材の受け入れは必要不可欠という思いを伝え続け、社内で合意を取り付けた。
そこからは受け入れに向け猛進。登録支援機関と連携しZoomで現地人材との面接を経て、ミャンマーの2人を採用することを決めた。採用後の生活支援や日本語学習支援、教育体制の整備などの経済的・人的投資を行った。
軍主導の体制にあり、出国の管理が強化されているミャンマーから来日してきた2人。まずデイで指導するにあたり、ミャンマー語のマニュアルや写真付きの手順書も整備。利用者とのコミュニケーション、介護技術の基礎、食事介助、入浴介助、送迎補助、介護記録などの業務を丁寧に指導していった。
そして、今春からは、訪問介護の同行訪問を開始。緊急時対応やコミュニケーションなど、もし分からないことがあれば、サービス担当責任者に相談するか、佐々木さんの携帯電話に連絡するとルール化。生活面の困りごと相談も休日問わず受け止め、対応した。
これまで大きなトラブルはなく、一度「調理の味付けが合わない」と利用者側から交代を求められたことがあるくらいだ。訪問介護事業所管理者の行田まなみさんも「飲み込みも早いし、分からないことはちゃんと尋ねてくるので、もっと伸びると思います」と評価する。
母国で祖母と同居しており日本行きを希望したという23歳のイン・イン・ラインさんは「最初は利用者さんと話すときにわからない言葉があるので不安はあった。でも訪問後に先輩に教えてもらっているので、今は言葉もやり方も自信があるね」と胸を張る。
訪問介護に従事する外国人材は、実務経験1年以上が要件。施設で勤務した特定技能外国人を訪問介護事業所に異動させるケースを想定しているとされる。だが、佐々木さんは、将来の在宅介護人材を育成するためにも、外国人を直接在宅サービスの現場で受け入れ、在宅で利用者のリズムやニーズに合わせることの大切さや、施設との違いを教育することが重要だと強調する。
さらに、向上心の高い外国人の存在が、既存職員の刺激になり、業務にも好影響を与えているようだ。日々の業務をマニュアル化する過程でも、当たり前にやってきた介護技術や支援方法、業務負担を見直す機会になった。職場全体のコミュニケーションも改善しているという。
課題は「コスト」だ。
同社の場合、登録支援機関へ1人月2万5千円の支援費のほか、各種の申請費用を負担。居住費やガス光熱費は会社が負担し、一部を2人から徴収している。今月受講する実務者研修の受講料も一旦事業者が支払う。もちろん、給与は日本人職員と同様だ。「せめて登録支援機関への支援費の補助があれば」と本音も漏れる。
受験機会の少なさも懸案事項と指摘する。
「5年間で2回の国家試験で合格しなければ帰国になる。2人は相当なプレッシャーの中で働いています」(佐々木さん)
受験機会を増やしたり、一定の知識と技術があれば長期間滞在できる仕組みにする必要があるのではと問いかける。
課題はあるものの、外国人材の受け入れは、単なる人手不足対策ではないと佐々木さんは言う。「異なる文化や価値観を持つ人たちと働くことで、職員一人ひとりの視野が広がり、職場全体が成長するきっかけになっています」。人口減少社会でサービスを継続するために、事業を進化させるチャンスになるかもしれない。
佐々木さん
利用者に笑顔で話しかけるヨンさん
利用者宅へ出発するインさん。先輩に教えてもらい自信をつけている

