- 2026/07/28
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傾聴力で現場を支える
介護美容は、介護が必要な人に向けてネイルやハンドトリートメント、フットケア、メイク支援などを提供するサービスだ。セラピストが介護施設や高齢者の自宅に訪問し、施術を行う。「美容を楽しんでもらうこと以上に、施術をしながら利用者さん一人ひとりの話をじっくりと傾聴することを心掛けています」。そう話すのは、2026年2月から介護美容サービス「心花(ココハナ)」を開業した新沼恭子さんだ。介護現場における介護美容の役割ついて話を聞いた。
30年間に渡り、百貨店の宝石店に勤務し、接客や外商の仕事を経験してきた新沼さん。福祉業界に携わるのは初めてだという。介護美容に挑戦したきっかけは、おしゃれが高齢者の心を動かし、生活にハリを与えることを実感したことだった。
「百貨店で働いていた頃、おしゃれをしているお客様はご年配でも元気な方が多いと感じていました。実際に、父が亡くなり元気をなくした母のためにネイルをしてあげたら、すごく喜んでくれたんです。その後、母も亡くなってしまい『もっと何かしてあげたかった』という気持ちが残った矢先にこの仕事の存在を知りました」
昨年10月から介護美容の専門スクールに通い、卒業を間近に控える中、現在は毎月約4施設に訪問している。筆者が取材をした日は、川崎市の老人保健施設レストア川崎(医療法人三星会)を訪問。ここでは週に1回ネイルを行っているという。
テーブルに色とりどりのマニキュアを並べる新沼さんに、菫色のネイルをした女性が「前にも来てくれた方よね?」と声をかける。以前も施術を受けたリピーターの利用者だ。女性の爪や皮膚を傷つけないよう手先を繊細に動かし、少しずつ古いマニキュアをふき取る。爪の形を整え、新たに色を塗布する間も、できる限り相手の顔を見て丁寧に話を聞く新沼さん。女性は若い頃の思い出話に花を咲かせ、鮮やかに染まった指先を見て「今は足が悪くてネイルサロンに行けないから嬉しいね」と満足気だ。その後もリピーターの女性2人に施術し、2時間ほどで施設を退出。「次は私もお願いね」と予約を申し出る人もいた。
他の施設では、娘が面会に来ないことで不安が募り、興奮状態に陥った入居者の女性にハンドトリートメントをしたことも。「オイルを使用して腕や手を丁寧にさすりました。血行が促進されていくうちに表情がみるみる明るくなり、安心してくださったんです。あの笑顔を見て、この仕事に就いてよかったと思いました」。
新沼さんは、施術の中で気づいた利用者の様子や皮膚状態の些細な変化を見逃さず、施設職員にこまめに報告しているという。
「業務に追われ、利用者さん一人ひとりとゆっくり接する時間がない職員さんも多いと思います。介護美容を通じたサポートで、職員さんが喜んでくださることもやりがいに感じています」
単なるレクリエーションの役割にとどまらない介護美容。様々な視点を現場に取り入れ、多職種で支え合うことがケアの質を高めるカギだ。
新沼さん
水性のマニキュアを使用し、爪への刺激の配慮
淡いピンクのネイルで記念撮影

