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本人と対話重ね、お互いの理解深める カスハラ利用者の「たらい回し」解決へ 医療・介護を受ける人と担う人のナーシングカンパニー 山﨑和代代表
  • 2026/10/06
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在宅介護・医療の現場では、カスタマーハラスメント行為を繰り返す利用者・その家族が、多くの事業所からサービス利用を拒否されるケースが少なくない。事業者はカスハラから職員を守ることができるが、いくつもの事業所を渡り歩き「たらい回し」にされた利用者には必要なケアが届かない。支援と職員の安全を両立する道を模索したい。兵庫県の介護現場におけるハラスメント対策のマニュアル策定などに携わった山﨑和代さんは「本人と対話を重ね、たらい回しになる理由を丁寧にアセスメントすることが大切です」と話す。


山﨑さん

2001年から22年間に渡り、西宮市社会福祉事業団の訪問看護センターで所長を務めた山﨑さん。17年度からは兵庫県の「訪問看護師・訪問介護員安全確保・離職防止対策事業」に携わり、ハラスメント対策の促進に貢献した。その後23年に独立し、医療・介護を受ける人と担う人のナーシングカンパニー(兵庫県西宮市)を創業。訪問看護事業のほか、県内外でハラスメント対策研修を実施している。

実際にたらい回しにされていた高齢者のサービス利用を受け入れた経験はあるのだろうか。

「社会福祉事業団は準公的機関に位置づけられています。だからこそ、他の事業所で受け入れてもらえなかった高齢者にとっては、受け皿のような役割を担うことが多かったですね」

他の事業所に断られた理由について、ケアマネジャーなどが口にするのは「変わった人・気難しい人で対応が困難だったから」。しかし、多くの場合は実際に本人とじっくり話してみると、そんなことは全くなかったというので驚く。

「ケアマネやこれまで利用していた各種サービスで、本人の意向が充分に確認されていなかったのではないかと思います。支援者側が良かれと思って一方的に提供したケアが本人の求めるものとミスマッチしていたことで、信頼関係が崩れてしまったのではないでしょうか」

山﨑さんが運営する訪問看護ステーション「足とリンパとおなかの悩み訪問看護」では、本人が辿ってきた人生や価値観、今後の暮らしに望むことなどを丁寧に聞くように心がけているという。

「そして、私たちがアセスメントした内容を本人に伝える際、どのように理解していただいているかを確認することが欠かせません。お互いの理解が深まり、すれ違いを避けることにつながります」

また、サービスを中止した事業所が他の事業所に引き継ぐ際の情報共有の重要性についても強調する。

「中止になった原因や経緯が正確に伝わっていないことも多く、引き継いだ事業所でも同じ失敗を繰り返すという悪循環が生まれていると感じています」

足とリンパとおなかの悩み訪問看護では、実際に意向を充分に汲み取った支援計画を進めたことで、たらい回しにされていた利用者とも信頼関係を構築。「継続的に利用していただけるようになった方から『あんたの事業所やったらええ。他の利用者にも人気やろ?』という言葉をいただきました。とても嬉しかったです」と山﨑さんはほほ笑む。

しかし、丁寧なアセスメントを行っても一筋縄ではいかない利用者もいる。ある独り暮らしの男性は、過剰なセクハラ・暴言などの行為を受けたことを理由に、複数の事業所が撤退を繰り返してきた経緯を持つ。ケアマネを必要以上に呼び出す、窓から大声で叫ぶなど近隣住民にも被害が及んでいた。山﨑さんの事業所では大きなハラスメント被害を受けることはなかった。しかし、男性が運転する車に職員が轢かれそうになる事態が発生。本人を理解しようと前向きに訪問していた職員達も恐怖を感じていたという。

これを機に訪問時は退路を確保し、危険を感じたら利用者から離れて安全な場所で警察に通報するよう、職員に指示を言い渡したと山﨑さんは振り返る。

「ケアワーカーの中には相手を理解しようと思いやるあまり、ハラスメント行為を受けても本人の疾患や境遇を理由に『仕方ない』と我慢してしまう人も多いと思います。危険な兆候を察知するよう心掛け、自分の気持ちを押し殺しそうになったら一度立ち止まってほしいです」

さらに、職員全体が毅然とした対応を実践できるよう研修を繰り返し、組織単位で対策方針を固めることが重要だと説く。

26年6月に埼玉県川口市で発生した利用者家族によるケアマネジャー刺殺事件の影響も大きく、在宅介護現場ではハラスメント対策が喫緊の課題だ。利用者・家族に提示する契約書に、ハラスメント行為があった場合は契約を終了する旨を記載する事業者も少なくない。

職員を守ることは正当な対応だ。とはいえ、相手を理解する思考を停止させ、リスクを感じたという直感だけで支援を放棄することで、福祉の役割を果たせているのだろうか。事業者の安全と支援の提供を両立するための指針を尋ねた。

「職員の皆さんには、社会通念上不適切で不快に感じる行為を受けた時点で、そのことを事業所に共有することが求められます。そして経営陣に求められるのは、一人ひとりが当事者意識を持って対策・行動できる組織をつくることです。組織が主体となり素早く対応を講じることが事態の悪化を防ぐ。それが利用者がお互いの安心・安全を保つことにつながります」

加えて「他職種や行政機関の知恵を借りるのも一つの手ですね」と続けた山﨑さん。法人・地域が一丸となり、課題も成功体験も共有することがたらい回しの連鎖を止めるカギだ。


「本人を思い遣る気持ちと、カスハラを拒むことは、分けて考えてほしい」(山﨑さん)

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